鮭と酒の町、村上市のまちづくり

新潟村上のきっかわの千年鮭を吊るしている様子 地域づくり事例

こんにちは、ほんちゃん(@hmasa70)です。

町屋の再生や人形さま巡りなどの取り組みを行っている村上市を視察させてもらいました。

村上市といえば、〆張鶴などの日本酒と塩引鮭で有名な“さけ”のまちです。

町屋の店内に何百匹もの干し鮭が吊された「千年鮭きっかわ」。

こうした町屋の“ナカ”の魅力を“ソト”に発信しようと人形さま巡りや屏風まつりなどに取り組まれたのが吉川社長です。

きっかわのスタッフで、ゲストハウス開業合宿の仲間でもある高橋典子さんの紹介で、たった3人での視察にも関わらず、社長のお話を伺わせていただきました。

まちづくりにはまったく興味がなかったんです

その開口一番「実はまちづくりにまったく興味がなかったんです」と言われたのには驚きました。

実は伺う前に、高橋さんと黒塀や町屋再生プロジェクトなどの取り組みや「春の庭百景めぐり」で開放されたお寺の庭などをまち歩きさせてもらい、そのプロジェクト数やスピード感、情熱に圧倒されていたからです。

以前は商店街の会合で発言もせず、汗もかいてこなかったという吉川さんがどうして村上のまちづくりに取り組みだしたのか、そこには全国町並み保存連盟会長であった五十嵐大祐氏との出会いがありました。

「商店街の道路を拡幅すれば、町は必ず衰退する。あなたがやめさせなさい」といわれ、その夜に一睡もできずに悩んだそうです。

私も地域に関わっていますが、まちのことを自分事としてそこまで深く受け止められるかと言われると自信がありません。

道路拡幅の反対署名運動をして、商店街から村八分にあってもめげず、今度は人形さま巡りの実現に向けて奔走する。

一度決心したら、なんとしてでも実現に向けて動きを止めない芯の強さを感じました。

「朝まで悩んだとき、自分のことはどうでもいいと思えたんですね。もっと価値あるものに気づくと心が楽になったんです」と、昔、村上のために奔走していた父親の姿を思い出し、村上の町屋の価値に気づいた吉川さんの活動はそのときから始まりました。

吉川さんに町屋再生の取り組みを紹介していただく。その1軒1軒に物語が詰まっている

「町屋と人形さまの町おこし」にはまちづくりへの思いがつまっている

視察の際にいただいた一冊の本。

「町屋と人形さまの町おこし」には、村上のこれまでの取り組みが詳細に描かれています。

具体的な中身については、ぜひこちらを読んでいただきたいです。

 

まちづくりのプロジェクトに関わる人にはぜひ読んでほしい一冊(2016年に増補版)

吉川さんと二人三脚でまちづくりを行ってきた奥様が、本人とはまた違う切り口で書かれていますので、その一部を紹介します。

人形さま巡りの期間が長過ぎて大変だったという地元の声や一回目の成功をみて、仲間に加えてほしいという駅前商店街の要望に対して、催しの魅力を維持するため、吉川さんは和を良しとはしませんでした。

そのため、仲間内からも「あいつは人の話を聞かない」と言われ、第二回の人形さま巡りが大成功する裏で、吉川さん本人は最高につらい状態にあったそうです。

「自分一人で突き進んでいくことは得意であっても、市民の組織をまとめるという初めての仕事は吉川にとって非常に難しく、精神的な負担のかかることであった」というのは奥様ならでは意見だと思いました。

また催しを通じて、お客さまに説明する地元のお年寄りたちが次々と元気になったことや屏風まつりが蔵の中身の家庭内伝承につながったこと、名も無き市民がゴミ拾いをしてくれたことなど、表には現れていない成果が数多く生まれたことについても触れられています。

この本を読みながら、黒塀や町屋の再生で村上の景観が変わり、来訪者が増えたことは当然すばらしい成果ですが、むしろ私は、来訪者によって市民の方々が町屋の価値を再発見し、自ら行動を起こすようになった意識変化こそが何よりの成果ではないかと思いました。

他人依存、行政依存ではなく、自らできることを行動に移そうという意識変化をどうすればプロジェクトで導けるか。

とても大切な「問い」を教えてもらいました。