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地域目線で「人類を前に進めたい」を読む

こんにちは、ほんちゃん(@hmasa70)です。

チームラボを体験したことがありますか?

ボクは御船山を訪れるまで、恥ずかしいながらまったく未経験でした。

現地で驚いたはまず人の多さ。

いかに多くの人に支持されているかを身をもって知りました。

それ以上に感動したのは、「場」が持つ力や意味を拡張して伝えていること。

神聖な空間をより神聖に感じさせる展示には鳥肌が立ちました。

地方でも国際芸術祭など、アートの取り組みが盛んです。

ただ作品が「そこ」にある必然性を感じないこともしばしば。

チームラボの意図や考えを知れば、これからの地域とアートの可能性を少しは紐解けるのではないか?

そんな思いで、この本を手に取りました。

「人類を前に進めたい」はどんな本?

「人類を前に進めたい」は、チームラボ代表の猪子寿之さんと評論家の宇野常寛さんの対談です。

2015年から4年もの間、展示会や作品コンセプトなどについて語り合われたもの。

チームラボが目指す「境界のない世界」について、宇野さんが読み解いてくれています。

ボクは宇野さんのオンラインサロン「PLANET CLUB」で、チームラボや御船山のことを知りました。

CLUB内には、宇野さんと猪子さんが作品映像をみながらトークしたコンテンツもあります。

この本は実際の作品をみたり、現地で体験しなければ、なかなか理解は難しいかもしれません。

冒頭の30分はYouTubeでも配信しているので、興味ある人は覗いてみてください。

地域におけるアートの可能性

以前、地域とアートの可能性を考えたくて、直島を訪ねたことがあります。

直島といえば、瀬戸内海国際芸術祭の中心地。

瀬戸内国際芸術祭の直島にみるアートのまちづくり

2019年10月30日

たしかに「家プロジェクト」は、集落の空き家や老朽化した神社を再生したものもあります。

でも、熊本のアートポリスで目指していた「建築博物館」の世界観の延長線上にあるように感じました。

「直島である必然性はあるのか?」

銅製錬所があった直島の歴史と向きあったような作品には出会えませんでした。

ベネッセの資本やアートそのもののチカラは感じます。

ただ地元の人にとって、セブンイレブンと銭湯ができたこと以上に価値を産んだのだろうかと考えるとモンモンとします。

もし予算がなくなり、アートを維持できないとなったとき、地域の人たちが果たして立ち上がるだろうかという疑問をずっと消えませんでした。

御船山で感じた境界のなさと身体性

じゃあ、チームラボはどうなのか?と言われそうです。

ボクが御船山で感じたのはまず、「そこにある景色と作品の境界があいまい」ということ。

地の自然や景観が前提にあって成り立つアートというのが印象的でした。

それと冒頭にも書いたように、「場」の意味を拡張して伝えていること。

本の中での宇野さんの言葉を借りると、「光や音や触覚感覚を通じて街の歴史と地理に人間を接続している」という感覚です。

ボクは普段、神社がもともとあった磐座(いわくら)や神籬(ひもろぎ)に行くのが好きなのですが、空間がもつ独特な力があります。

沖縄の御嶽(うたき)などもそうです。

ボクにとって、これまで御船山はゴールデンウィークにつつじを見に行く場所。

「かみさまの御前なる岩に憑依する滝」をみたとき、ここは磐座や御嶽と同じなんだと初めて気付かされました。

言語ではなくアートという身体的な知性の意味がようやくわかった瞬間でした。

匿名性の対人関係のアップデート

ただ、チームラボの作品が地域とアートの関係性の回答かといわれると違和感があります。

風景に溶け込み、場の意味を伝えてはいても、武雄という地域や人とは接続していないし、境界を感じます。

御船山でチームラボの「かみさまがすまう森」が開催される間、車で15分ほど離れた武雄科学館が満車になるほど周辺道路は混雑します。

周辺の地域の方々がどのように感じているのかは、気になりました。

でも、他人が触れることで作品が影響を受け、その影響自体が作品になっています。

たまたまその場に居合わせた人たちと、アートを通じてコミュニケーションがあったりします。

中心性がなく、匿名性が高いコミュニケーションが自然発生するのは面白いと思いました。

太宰府天満宮に鷽替え(うそかえ)という神事があります。

太宰府天満宮の「鷽替え(うそかえ)」神事を体験する

2019年1月16日

誰もが参加でき、木彫りの鷽(うそ)を暗闇の中で「替えましょ!」といいながら、他人と交換することで、厄を払うお祭りです。

天満宮が主催者ですが、他者同士の中心性のないコミュニケーションはよく似ています。

赤の他人と100人ぐらい顔を合わせて木うそを交換し、自分が買ったものではなく他人と交換したものを持ち帰るというシステムが謎に面白いわけです。

こうした「場」を介した他人とのコミュニケーションは、匿名性を肯定していて非常に興味深いと思いました。

地域と都市の関係性の再構築はどう図るか?

ボクは幼少期に転勤族で地方を転々とすることで、地域に根っこがないことへのコンプレックスがありました。

とはいえ、田舎独特の地縁や血縁の濃いコミュニティには未だに苦手意識があります。

ある程度、距離や時間をおいて付き合うのがちょうどよかったりします。

でもそれ以上に都会には地域とのコミュニケーションが苦手な人はきっと多いはずです。

田舎の集落の維持や活性化というのは、簡単に言うと「地域と都市との新しい距離感の再構築」。

チームラボのような匿名性の高いコミュニケーションは、地域と都市をつなぐ新しい回路になりうるかもしれないと感じました。

もっと地域文化や生活を肯定して、アートという回路に接続してもいい。

神楽だったり、農漁村の生活様式や風景などは、まだ拡張できる気がします。

ボクは地域に関わる立場から、自分なりの仕組みづくりを模索していこうと思います。

ほんちゃん(本田正明)

地方生まれ、地方育ちの40代子育てフリーランス。都市計画の専門家ですが、地場企業や大学、自治体と公民学連携プロジェクトに携わっています。学生たちと農漁村での地域づくりやソーシャルビジネスを展開中。フィールドワーク大好き。福岡県糸島市在住。九州産業大学非常勤講師。

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