こんにちは、ほんちゃん(@hmasa70)です。
新年度が始まりましたね!
社会人になり、これから地域づくりに関わる人もいらっしゃるでしょう。
私も新入社員になったころは、右も左もわからず不安を覚えた記憶があります。
今思えば、生意気で自分勝手だったなぁ……。
でも周りで応援してくれた先輩たちや師匠がいたおかげで成長できたことは間違いありません。
地域づくりに関する本をいろいろと紹介してもらい、読みふけったこともありました。
読書で得た知識がそのまま地域づくりに使えるわけじゃありませんが、
地域に関わる際の共通言語として、またバックグラウンドとして役立ったことは限りなくあります。
そこでボクなりに、これから地域づくりに関わりたい人向けの入門書を7冊セレクトしてみました!
1冊目は、地域づくりの原点ともいえる民俗学者である宮本常一の自叙伝「民俗学の旅」。
ボクが彼の本で最初に読んだのは「忘れられた日本人」ですが、地域づくりの観点からみると、この本が秀逸です。
宮本常一は日本各地の農山漁村をみてまわった知見から、農業や産業指導をしていました。
周防の猿まわしや佐渡の鬼太鼓(のちの鼓童)などを再発見し、支援したのも宮本さんです。
1,200軒を超える民家に泊めてもらいながら、地道に地域を歩き、地元の声を拾う。
フィールドワークや現場の大切さは、この本から学びました。
また彼の周りにいた人物がすばらしい。
パトロンでもあった渋沢敬三が宮本に送った言葉が刺さります。
「大事なことは主流にならぬことだ。傍流でよく状況を見ていくことだ。舞台で主役をつ
とめていると、多くのものを見落としてしまう。その見落されたものの中に大事なものが ある。それを見つけていくことだ。人の喜びを自分も本当に喜べるようになることだ。人 が優れた仕事をしているとケチをつけるものが多いが、そういうことはどんな場合にもつ つしまねばならぬ。また人の邪魔をしてはいけない。自分がその場で必要を認められない ときは黙って、しかも人の気にならないようにそこにいることだ 」
地域づくりは「地域が主役」であり、ボクらの役割は「裏方」だと思っています。
人の喜
でも、地域づくりに関わる人間として、こうありたいと
2冊目は、東京都知事だった猪瀬直樹さんが書いた「二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか?」。
二宮尊徳(金次郎)を再発見し、現代に蘇らせたのは猪瀬直樹さんの功績だと思います。
学校の校庭によく見かける薪を背負った二宮金次郎の銅像。
学校では働きながら勉強し、家庭も支えた苦労人としての美談だけが語られます。
でも、彼は単なる勤勉、倹約の人ではなく、地域経済を改革する卓越した金融プロフェッショナルだったというのがこの本の主旨です。
田舎の雑木林でタダ同然で仕入れた薪を、休日に都会で売りさばき、3年で三両余(今の価値で30万円ぐらい)を稼ぎました。
この話だけでも、二宮がいかに経済に精通していたかがわかります。
彼は服部家の奉公人だったころのエピソードとして、
「釜や鍋の底につくススが入用なのでせっせと磨いて取ってくれ。それが一升たまったら二文で買ってやろう。何升でも持っておいで」
と飯炊き女中にアドバイスをしていた話が出てきます。
ススをこまめに取ることで燃料効率がよくなり、十本の薪が八本で済むわけです。
毎日きちんと節約し、継続することで服部家は燃料コストを下げることに成功しました。
ただ、そこで終わるのではなく、奉公人たちと一緒に薪をソトに売り込むことで利益を上げます。
その利益をベースに金次郎ファンドをつくり、借金で悩む身内の奉公人には低利で融資し、外部には相場で運用もしていました。
彼はその後、服部家での実績をもとに桜町領の再建を任されます。
低成長時代にどのように地域経営を行っていけばいいかのモデルを示した人物でした。
3冊目は、哲学者の内山節さんが書いた「半市場経済」。
「半市場経済」の定義を引用すると、以下のように書かれています。
市場に依存し利益の最大化をめざすのではなく、また市場をすべて否定するのでもなく、生活者としての感性・感覚を事業活動にあてはめ、よりよき働き方やよりよき社会をつくろうとする目的をもって営む経済のこと。
「志」と「価値観」を共有することで、充足感と多幸感をもたらす新たな社会のかたちの創造でもある。
ボクなりに解釈しなおすと、他人との付き合いや信頼関係、「おすそ分け」や「お互いさま」といったの無形の価値を見直すこと。
地域づくりに憧れる若い人たちは、経済成長を是とした都市社会での生活に疑問を感じて、地域社会で地に足のついた仕事をしたいとよく相談にきます。
生きていくための最低限の稼ぎは必要だけども、それ以外の価値観を地域に求めているようです。
今の市場経済は、収益性や効率性を追求しすぎて、どこか人間性が排除されています。
「ありがとう」という笑顔をすぐに見れる環境で仕事をする。
そんな価値観をベースとした働き方がこれから地域でも主流になると思います。
価値観のパラダイムシフトが起きていることを教えてくれます。
でも今の人達が読むと、自分の考えは間違っていないと背中を押してくれる本かもしれません。
ただ、この本は少し観念的すぎるので、農家の勉強会や会合での話をまとめた地域の作法から (人間選書) が具体的でわかりやすいかも。
合わせて読むのがオススメです。
4冊目は、熊本大学名誉教授の徳野先生の「農村の幸せ、都会の幸せ」。
徳野先生は「道の駅」の考案者・命名者として有名ですが、ボクは「T型集落点検」の方がすごい取り組みだと思っています。
先生は、福岡でも定期的にトクノスクールというゼミを行っていて、何度か参加しました。
ゼミ後に必ず飲み会があるんですが、地域づくりとはなんぞや?とモンモンとしていたボクに、
「集落の維持に関わることはなんでも地域づくりでしょ!」
といわれ、あ、何やってもいいんだ、と背中を押してもらえ、すごく楽になりました。
T型集落点検というのは、集落の家族の性別、年齢、続柄、職業をプロットし、都市など他所に出ていった子どもや孫がどこに住んでいるかも書き込み、Uターンしそうな子どもたちを把握します。
誰が農地や山の相続をするのかを見つめ、10年後の集落運営を具体的に考えるわけです。
面白いのは、夫婦同伴で集まってもらうこと。
女性の方が他人の状況も含めて、集落のリアルな状況を把握しているからです。
独居老人でも、近くに子どもや孫が住んでいれば寂しくはないでしょう。
そうした「人間関係資源」を暮らしの豊かさの水準と捉えて、「子どもが帰ってこれる社会」づくりを必死で考えています。
農村から都市との付き合い方を考える視点は、田舎で地域づくりを始める人にとって非常に参考になります。
5冊目は、ちきりんの「マーケット感覚を身につけよう」。
急に現代的な本になりましたが、SNSなどのネット環境が発達している今、活用しない手はありません。
むしろ、ボクは都会にはないコンテンツが豊富な地域こそ、ネットを使った事業やビジネスに可能性を感じます。
マーケット感覚というのは、「売れるものに気がつく能力」「価値を認識する能力」のこと。
いくら頭がよくて学歴がある人でも稼げない人はいっぱいいます。
一方で、知識や経験がなくても、お片付けコンサルなどのように新たな仕事を開拓する人もいます。
地域は素材となるコンテンツはいくらでもありますが、価値を認識できなければ売れません。
マーケット感覚をきちんと身につければ、本やモノ、体験などをセレクトするセンスですら価値になります。
そうはいいながら、自分もまだまだです……。
デジタル・ネイティブの人たちの取り組みをみながら、自分もマーケット感覚を磨いている最中です。
6冊目は、木下斉の「まちで闘う方法論」です。
木下さんの存在を知ったのはまちづくりの「経営力」養成講座を読んでからです。
ボクよりも若い上に高校生のころから早稲田の商店街で事業や会社経営に携わっていたことに驚きました。
文章はめちゃくちゃ辛口なので、読みながら凹んだこともあります。
でも、自ら地域づくりの事業や経営に関わろうというきっかけを与えてもらいました。
この本はまちづくりや地域づくりに関わる人が、マネージャーとしてどう取り組むべきかを①思考編、②実践編、③技術編にわけて、超具体的に解説してあります。
思考編で紹介されている図書は、参考になるものばかりですが、それ以上に秀逸なのは実践編です。
地域づくりやまちづくりに関わるための「地力」をどうつけていけばよいか?
というのが、これから地域づくりに関わりたい人の関心事だと思います。
この本では、まずどんな事業にどんな役割で関わり、どのような経験を積めばいいかがわかりやすく解説してあります。
地域おこし協力隊などで地域に関わることになったものの、道標(みちしるべ)を示してくれる先輩や上司がいないケースはよく見かけます。
自分はマネージャーとしてどの段階にいて、どう成長していけばいいかを自分自身で描かなければいけません。
でも、この本を読めば、組織に属していなくても、地域づくりを通じてどのような成長ステップを踏んでいけばいいかがわかります。
経験していないと理解できない部分もあるかもしれませんが、マネージャーの成長プロセスを俯瞰することができる良書です。
最後の1冊は、マネジメントの神様ともいわれるP.F.ドラッカーの「すでに起こった未来」。
マネジメントに限らず、経営やマーケティングなどのさまざまな分野で慧眼を持つドラッカーですが、ボクが一番影響を受けたのはこの本です。
3章の「利益の幻想」の冒頭で、
利益に関するもっとも基本的な事実は、「そのようなものは存在しない」ということだからである。存在するのはコストだけなのである。
という記述が出てきます。
正直、最初に読んだときには頭の中に「??」が並びました。
ドラッカーは、利益だと思っているものすべては以下の3つのコストだというわけです。
①と②はだいたいわかります。
すごいのは③の考え方です。
利益と見えるものはすべて、労働者の明日の雇用や年金を生み出すために、再投資すべきコストなんだと。
なんてストイックな考え方だろう!と衝撃を受けました。3章の最後には、
マネジメントは利益などというものは存在しないことを、自分自身にも社会的にもたたき込まなければならない。存在するのはコストのみである。(中略)
真の資金コスト、明日のリスク、明日の労働者や年金生活者のニーズに見合った利益を上げていない企業は、社会から収奪している企業である。
とまで述べています。
経営者は常にお金がすべて労働者や社会に還元され、循環するようにマネジメントすべきだと規範を示したわけです。
ドラッカーが経営者に人気があったのもうなずけます。
地域づくりには、ちょっと高尚すぎる話だったかもしれません。
でもボクは私腹を肥やすようなことはせず、お金は常に地域への還元や循環を考えて行動すべきだと読み替えて自分の行動規範としています。
ドラッカーに限らなくてもいいので、決断に悩んだり、迷ったりしたときに、立ち返るべき思想や哲学を持っておくことは重要だと思います。
いかがだったでしょうか?
入門書として手を出しやすい、新書や文庫などを中心にセレクトしてみました。
興味ある本があれば、その人の他の著作を読んでみるという深掘りもぜひしてみてください。
もし、面白かった本などがあれば、感想を送ってもらえるとありがたいです。
人によって捉え方、感じ方も違うので、角度の違う意見はとても参考になります。
ボク自身もこの記事を書くにあたり、読み直してみて新たな発見もありました。
地域づくりに関わりたい人たちに、少しでも参考になれば幸いです。