地域づくり事例

住宅地エリアマネジメントの現状と実態とは?

こんにちは、ほんちゃん(@hmasa70)です。

この頃、住宅地のエリアマネジメントに関わっています。

ボクは普段、田舎の集落に関わっていますが、地域コミュニティのマネジメントには共通点が多そうということで、お手伝いすることになりました。

エリアマネジメントというと、すぐに思い浮かぶのは「大丸有」や「WE LOVE 天神」の取り組み。

イベントやマルシェのように、駅前やまちなかに"にぎわい"を生む活動がさかんです。

一方、住宅地では祭りや運動会などのイベントもありますが、どちらかというと防犯・防災活動や一斉清掃などの地味な活動がメインだったり。

近年は空き家や空き地が増えたり、見守りが必要な一人暮らしの高齢者が増えるなど、新たな地域課題も生じています。

また、活動の担い手の確保も年々困難に。

その解決手段として、期待が高まっているのが住宅地のエリアマネジメントです。

でも、まだまだ課題は山積の状態。

今回は住宅地のエリアマネジメントの前段として、住宅地でどのようなことが起きているのか、その現状と実態を紹介したいと思います。

住宅地の自治活動の現状

そもそも、なぜ住宅地にエリアマネジメントが必要になっているのでしょうか?

地域によって多少差はありますが、住宅地では農村集落などと同じように、さまざまな自治活動が行われています。

主な活動は以下のようなもの。

【主要な自治活動例】
  • 防犯活動(防犯パトロール、みまわり)
  • 防災活動(防災訓練、自主防災組織)
  • 環境美化(一斉清掃、リサイクル運動)
  • 体育振興(運動会など)
  • 交流活動(夏祭りなど)
  • 部会活動(子ども会、青年会、婦人会、敬老会など)

こうした活動が、月数百円の町内会費と住民ボランティアによって維持されています。(行政の負担金等も含む)

その取り組みが、時代の変化とともに合わなくなったり、参加者が減るなど、うまく機能しなくなってきています。

生産基盤や生活基盤などの共通項がなく、つながりがほとんどないエリアで、これから地域コミュニティはどうあるべきか。

その根源が問われつつあります。

既存住宅地と新興住宅地で課題が異なるため、以下ではそれぞれの状況を整理してみたいと思います。

既存住宅地が抱える課題

既存住宅地で問題を抱えているところの多くが、郊外の住宅団地です。

人口減少だけでなく、都心回帰の流れもあり、郊外には人が集まらなくなっています。

駅近郊では、若年ファミリー層やリタイヤ層の近居需要などがあり、更新や住替えも少しずつ進んでいます。

一方の郊外では、坂が多かったり、道路や敷地が狭いなどの不利な条件が多く、下記のような悪循環が生じています。

【既存住宅地の悪循環のイメージ】
  1. 不利な立地条件(坂、狭い幅員・敷地、公共交通が不便など)
  2. 土地や人の流動性が低い(地価の下落、買手不足)
  3. 空き家・空き地が増加
  4. 住民の高齢化と固定化
  5. 地域活動の担い手の減少

こうした地域では、新たな住民がなかなか入ってきません。

足腰の悪い1人暮らしの高齢者が、回覧板を回せないので町内会から外れてしまったという話も聞きます。

本来はお互いで支え合うための自治組織で、真逆のことが起きています。

こうした団地ではエリアマネジメントとして、地域そのものをどう維持していくかが求められています。

行政の都市政策にも関わる重たい課題です。

新興住宅地が抱える課題

一方の都市部では、新駅整備と合わせた新興住宅地の開発もまだまだ続いています。

こうした住宅地では若年層が多いので、地域自治の課題はないのでは?と思われるかもしれません。

逆に20〜30代の若年層は過去に地域自治の参加経験がないため、必要性を感じない人たちがほとんど。

開発と合わせて自治組織づくりが行われなかった団地では、自治機能がまったく働かないこともしばしばです。

自治組織がなければ、広報や回覧板などの配布ができなかったり、公園や水道などの公共インフラに問題があっても、地域として声を挙げることができません。

個々が苦情をいうのと、地域課題として区長が意見を述べるのは、行政への影響力も違います。

若い時分には、そうしたことへの関心が希薄なため、安易に自治活動を批判してしまいがち。

ボクもマンションを購入して理事長を経験したり、子どもを通じて地域に関わるようになって、ようやく必要性を認識したので、その気持もよくわかります。

【新興住宅地での課題】
  1. 自治組織の不在 → 外部、行政との交渉窓口がない
  2. 自治への不参加 → 住民間不平等、二極化
  3. 地域活動の不活性化 → 防犯・防災・清掃活動の不備
  4. 住民のコミュニケーション不足 → セーフティネットの欠如
  5. 自治意識の希薄化 → 行政等への外部依存意識

でも地域活動をしていないと他人任せになり、いざ台風や地震などの被害を受けたときに、地域としてまったく動けません。

地域コミュニティの本来の役割は、困ったときにお互いが助け合うためのセーフティネット。

新興住宅地のエリアマネジメントでは、行政や他人依存から自治意識を高めるための啓発、自治組織を形成するプロセスへの支援が求められています。

住民とデベロッパーと自治体の関係性

上記でみてきたように、同じ住宅地でも課題がまったく異なります。

住民だけでなく、行政やデベロッパー(開発事業者)が一緒になって考えないと解決は難しいものばかりです。

ただ、現状はそれぞれがバラバラで同じテーブルにすらついていません。

既成住宅地では、販売が終わった時点で、開発事業者がいなくなるところがほとんど。

制度として組み込まなければ、住宅地が売れるまでの協力は得られたとしても、持続的な関与は難しい。

行政も公園や街路樹の管理などを地元に任せてランニングコストを減らしたいという思惑が目立ちます。

一方、高齢化と人材不足で樹木の管理が困難になった集落では、剪定を行政にお願いしたいという話が出るなど、お互いがないものねだりをしています。

組織間のコミュニケーションも不足していて、お互いの現状や実態すら共有できていません。

住民同士でも自治活動に積極的に参加する人と、町内会費すら払わず地域づきあいをまったくしない人に分かれたり。

エリアマネジメントの課題は実に多種多様。

共通の目的で集まった集団ではないので、単一の目標やテーマなどを設定できない難しさもあります。

でも、新たな動きがないわけではありません。

鉄道や電力・ガス会社など、企業理念と地域の持続性が合致する事業者が、エリアマネジメントに関わる活動を始めています。

また、移住者が仲間を募り、自ら楽しみながらエリアを活性化し始めている地域も。

次回以降は、そうした新たな取り組みを紹介しながら、これからのエリアマネジメントの取り組みを考えたいと思います。

ほんちゃん(本田正明)

地方生まれ、地方育ちの40代子育てフリーランス。都市計画の専門家ですが、地場企業や大学、自治体と公民学連携プロジェクトに携わっています。学生たちと農漁村での地域づくりやソーシャルビジネスを展開中。フィールドワーク大好き。福岡県糸島市在住。九州産業大学非常勤講師。

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