地域交流・体験

「工房まる」にみるこれからの働き方

こんにちは、ほんちゃん(@hmasa70)です。

「工房まる」をご存知ですか?

福岡市内に3箇所のアトリエがあり、絵画や木工、陶器などの創作活動を行っています。

何も知らずに訪れると驚くかもしれません。

実は活動している人たちは、みんないろんな障害を持っています。

でも笑顔で自由にのびのびと創作活動をしています。

友達のようにフラットに接するスタッフをみると、障害をなんだか「大変なもの」、「難しいもの」とみていた自分が恥ずかしくなったり。

驚きや羞恥心、自己嫌悪などいろんな感情であふれ出て、まともに話ができませんでした。

でも、未来の働き方がすでにここにある。

そんな感想をいだいたのが、ボクの工房まる初体験でした。

それから2ヶ月。

もう一度、きちんと話を聞きたいとと思い、再び訪問させてもらいました。

文章ではなかなか伝わらないですが、「まる」を訪れてみたいと思うきっかけになれば幸いです。

補足

工房まるの二人と考える「人の居場所」について(2018/5/29 Soarコラム)
・「まる」については、こちらの対談がとてもいいです。「まる」を立ち上げた樋口さん、吉田さん2人の思いがよく伝わってきます。

日本財団DIVERSITY IN THE ARTS(工房まる)
・立ち上げの経緯や時系列による取り組みなどの整理はこちらの記事が参考になります。

本人がやりたいことを自由に表現できる環境

入口近くで創作活動をしていた宮崎さんは、ひたすら◯(まる)を貼っていました。

それもパンチで開けた穴の◯ではなく、全部手づくり。

「貼り始めたのは最近なんです。しばらくの間、ずっと◯を切り続けていたので、どうするんだろうと思っていました」

とスタッフさんもいうように、工房まるでは、本人がやりたいことを自由に行っています。

台紙の厚紙も自分でどこかで調達してきたそうです。

それでもなんで◯なんだろう?そう気にしていると、

「おそらくなんですが、イベントでみんなでお面を作ってかぶったことがあるんです」

「そのときに目の部分を切り抜いたことがヒントになっているのかも」

とアニメのキャラクターの一部分をカッターで丁寧に切りとった紙を見せてもらいました。

お面ではなく、その切り取った◯に興味を持って、それを表現につなげる。

発想の自由さ、表現の豊かさがうやらましいかぎりです。

宮崎さんは陶芸もやって、そちらの作品もユニーク。

土で細長い紐をつくり、それを幾重にも重ねることで丁寧に器をつくっています。

一緒に訪問した友人は、平皿タイプの作品を気に入ってその場で購入していました。

収入や稼ぐことが創作活動にもつながる

宮崎さんの向かいで、2階建てのロンドンバスを描いていたのは和泉さん。

遠くまで手が届かないそうで、反対向きに色を塗っていました。

色使いや線の使い方、タイヤの形などがとても愛らしい作品です。

思わず「これほしい」って言葉が出てしまったほど。

和泉さんの作品は、ジュースの自販機の外装にも使われています。

その自販機でジュースを買うと印税が入る仕組みなのだとか。

工房まるでは、作品を個人名で出していて、それぞれの収入につながっています。

息子が着ているTシャツは大牟田市動物園とのコラボだったり。

企業や組織とのタイアップなども数多く手がけられています。

稼ぐことが、創作活動のモチベーションにもつながっています。

川端さんの周りには「大金」や「稼ぐ人になる」といった張り紙がありました。

名刺もいただいて、営業も忘れません。

作品づくりは、写真をパソコン上でトレースしたものを描かれています。

中にはタージ・マハールを半年以上かけてトレースしている大作も。

パソコンで作品をつくりたいという本人の話から、スタッフがトレースのアイディアを提案したそうです。

本人の良さを引き出すスタッフの魅力

工房まるを見学しながら、クリエイティブな作品や作家さんに魅力を感じると同時にスタッフにも魅力を感じます。

木工のBilily(ビリリー)は、板谷さんが出来る動きを手がかりに、紙をやぶいたものを糸ノコが得意な田中さんが無垢材から丁寧に切り出してつくられています。

作品名のBililyも紙をやぶく音からつけられたそう。

「目」となる穴を開いているだけで、とてもチャーミングです。

作家さんたちができることから、作品や組み合わせ方を考えたり、時には創作活動のための道具もつくる。

そうしたスタッフの働き方もとてもクリエイティブだと感じました。


遊びも仕事も大切にする

最後に陶芸をしている人たちを見学させてもらうと、ふと気になるものが。

電気釜の上に何かおいてあります。

「神さまらしいです。このまま焼くと割れるかもしれないので、予熱で乾燥させています」

作品というより遊びで作ったものらしいです。

「まる」にいると自由度が高く、遊びや仕事の境目があいまいだなと感じます。

だけど、どちらも大切にしている。

個人を型にはめる工業生産型の働き方からすると対極的です。

「まる」では作家さんもスタッフもお互いの良さを引き出すために、カバーしあう関係があります。

そして、そのどちらもクリエイティブで楽しそう。

これから組織には、もっと「まる」のような関係性や働き方が必要かもしれない。

そう感じた1日でした。

ほんちゃん(本田正明)

地方生まれ、地方育ちの40代子育てフリーランス。都市計画の専門家ですが、地場企業や大学、自治体と公民学連携プロジェクトに携わっています。学生たちと農漁村での地域づくりやソーシャルビジネスを展開中。フィールドワーク大好き。福岡県糸島市在住。九州産業大学非常勤講師。

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