コンサルティング

地域づくりという職能と働き方

こんにちは、ほんちゃん(@hmasa70)です。

地域づくりってどんな仕事?

フリーランスになって、相談を受ける機会も増えました。

地域での働き方として地域づくりに興味を持つ人は多いようです。

ありがたいことに大学で非常勤講師で話す機会もいただきました。

せっかくなので、地域づくりについて自分なりに整理したいと思います。

地域づくりの仕事や働き方に興味ある人は参考にしてください。

地域づくりとまちづくりの原点の違い

あいまいなのが「地域づくり」と「まちづくり」という言葉。

このブログでも都市の取り組みは「まちづくり」、田舎の取り組みは「地域づくり」ぐらいの分け方で使っています。

もう少し丁寧に整理すると、原点が違います。

  • まちづくりー都市計画・アーバンデザイン
  • 地域づくりー社会学・民俗学

「まちづくり」は当初、都市計画・アーバンデザインから生まれたものです。

行政や開発事業者の経済活動がベースであり、都市再開発などの大規模な事業でよく使っていました。

一方で、「地域づくり」は民俗学や社会学から発生しているので、住民を主体とした暮らしや生活がベース。

家族や近隣の住民のことを考え、支えあいや協力しあうことが原点です。

最近はお互いに地域振興や活性化を目的として、同じように使っていますが、ベースとなる考え方はまったく違うものです。

地域づくりは住民の立場で考えること

ボクはもともと都市計画の専門家として、行政側や事業者の立場でまちづくりに関わっていました。

ただ、実際に地域に関わっていく中で、認識のズレを感じるようになりました。

行政や事業者が良かれと思って地域で実施していることが、必ずしも住民にそう思われていないことが多々あるからです。

下記の立場別状況をみてもらうと分かりますが、住民は非常に弱い立場です。

資金も乏しく、サポートできる専門家も限られます。

もっと住民の立場で、地域に関わるパートナーでありたい。

ボクが独立してまで地域づくりにこだわるのは、そうした背景があります。

地域振興や経済活動よりも住民の暮らしや生活をどう維持するか。

行政や事業者ではなく、住民の立場で考える活動が地域づくりだというのがボクの認識です。

主体行政事業者住民
目的地域振興経済活動生活の安全・安心
手段制度改正事業展開住民活動
資金補助金事業費ボランティア
専門性

地域づくりに対する誤解

住民の立場に立つと、行政や事業者の誤解もよく見えてきます。

行政が住民の立場だという誤解

地域活性化は地元や住民のためじゃないの?と思うかもかもしれません。

でも住民にとっては活性化よりも自治機能の維持や生活のしやすさを改善してほしいのが本音だったりします。

行政に付き合わされている、という話もよく聞きます。

行政も合併で大きくなり、職員もサラリーマン化しているので、地域の実情がよく見えていなかったり。

国の補助事業などで予算があるときだけ、熱心に関わるということも起きます。

地域に雇用や仕事ができればいいという誤解

事業者の立場でも、地元に収入や雇用が生まれればいい、という誤解があります。

もちろん、馬路村のゆずや上勝町の葉っぱビジネスのように、地域振興が地元の仕事に紐付いて成長したケースはあります。

一方で問題なのは、事業が地域の産業との関わりがほとんどなかったり、観光地化した場合。

雇用は地域外から行われ、地元にはお金が落ちず、残るのは渋滞や騒音、ゴミなどのトラブルばかり、という話もよく聞きます。

以上の誤解を踏まえて、地域づくりでは国の動向や流行に過度に振り回されず、

  1. 誰のための振興なのかという原点を見失わないこと
  2. 地域の状況を踏まえて身の丈でプロジェクトを発想すること

という2つの視点が必要だと感じます。

事業が地域にメリットを生まないときでも、地域社会に配慮したり、共存意識を持つことは大事ではないでしょうか。

地域づくりの相談パターン

ボクのような外部の人間が地域に関わる際、①地域、②場所、③人の概ね3つの相談パターンがあります。

①地域からの相談

一番多いのが、地域からの相談です。

地域や集落の課題解決に協力してほしいという相談を地元の関係者や自治体からよく受けます。

以前は、行政主導で地域の構想や計画づくりなどを行っていました。

でも、実際に地域が求めているのは課題に対するアクション。

ただ、お金も仲間も少ないので、すべての地域課題を解決することはできません。

小さくてもいいので地元の優先順位が高く、自分ができることから始めるようにしています。

具体的な活動を起こすことで、地域の実情が見えてくることもよくあります。

②場所の相談

2つ目が場所を使えないかという相談です。

土地利用の話よりも最近は空き家の活用が多いです。

地域からどうにかしてほしいという場合もあるし、所有者からの相談を受けることも。

内容は都市計画の用途変更から活用方法の提案、事業計画づくりなどまで幅広いもの。

ボク自身が空き家を福祉的な活用していることもあり、同様の相談もよく受けます。

空き家は改修費用がかかるケースが多いので、採算が合わず進まないケースも多かったりします。

③人からの相談

3つ目が、地域に関わりたい人から相談を受ける場合。

具体的に事業をやりたいけど、場所がなかったり、やり方がわからないという相談です。

やる気がある人からの相談が一番動きます。

内容も具体的なので、人を紹介するだけで動くこともしばしば。

困るのは、やりたいことがまだわからないけど地域に関わりたいという相談。

若い人に多いのですが、ボクにできることは興味を持ちそうな分野の事例を紹介するくらいです。

いずれのパターンでも、地域に思いがあり、事業リスクを取る覚悟を持った人がいないとこちらもモチベーションが上がりません。

具体的に動く人たちから相談がくるように、意図的にフィルタリングをしておくことも必要です。

地域づくりに求められる職能

地域づくりに関わる際、どんな能力が必要かと問われることもしばしば。

自分なりに考えると、以下の能力が必要だなと感じます。

  • 観察力・洞察力
  • コミュニケーション力
  • マネジメント力
  • 事業感覚

どれも現場で鍛えられる能力ばかり。

ただ観察力や洞察力には、地域の歴史的背景などへの理解も含みます。

調べる力、聞く力のような基礎教養も不可欠な能力です。

地域づくりへの誤解でも述べましたが、事業提案も地域の産業や文化に根ざしていないと浮いたものになり、一過性になりがち。

地域の協力や地元の主体性も生まれません。

田舎には、地元のリーダーが「聞いていない」となると面倒くさいことが起きやすいもの。

慎重にものごとを進めるためのコミュニケーションとマネジメントは大事な能力です。

最後の事業感覚とは、マーケティング感覚だけでなく、事業リスクを負えるかどうかも大事。

ボクが地域で事業を始める際は、数万円の少額でも一緒に出資してくれる仲間を募って実践するようにしています。

補助金に頼るのではなく、自分で身銭を切ってできることから始めるのは、これからの地域づくりに欠かせないでしょう。

さいごに

えらそうに書きましたが、ボクもまだ地域づくりの仕事だけで自活できているわけではありません。

これまでの行政や事業者へのコンサルティングなども並行して行ってます。

先輩には加工品づくりやデザインで地域に貢献している人もいます。

ボクも地域に長く関わり続けられるよう、地域の休耕地や建物を活用したストックビジネスにもチャレンジしていきたいと思っています。

ほんちゃん(本田正明)

地方生まれ、地方育ちの40代子育てフリーランス。都市計画の専門家ですが、地場企業や大学、自治体と公民学連携プロジェクトに携わっています。学生たちと農漁村での地域づくりやソーシャルビジネスを展開中。フィールドワーク大好き。福岡県糸島市在住。九州産業大学非常勤講師。

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