こんにちは、ほんちゃん(@hmasa70)です。
「地方創生の正体」という地域社会学と自治体学の専門家の対談録を読みました。
きっかけはネットで見つけたインタビュー記事。
インタビューを読んでもらうとわかりますが、東大の金井先生の国や自治体に対する意見はかなり直球です(笑)
とはいえ非常にわかりやすい内容です。
地方創生をどのように見ているのだろう?と気になってこの本を手に取りました。
東日本大震災の復興の議論も興味深いのですが、ここでは地方創生の議論を中心に紹介したいと思います。
そもそも、地方創生は国が政策として始めた地域活性化事業です。
過去を振り返ると地方創生と同様の取り組みが何度も繰り返されています。
この本で紹介されているものは、以下の通り。
【過去の地域活性化プロジェクト】リゾート法以前は、工業化や産業化を志向した都市開発で大規模なものでした。
平成に入ってからは、商業や業務施設の立地や観光プロジェクトの支援などに変化している印象があります。
全国の市町村に一律で1億円を配ったふるさと創生はちょっと例外的。
とはいえ、国が地域活性化のアメ(補助金や緩和策)を出し、自治体がその獲得競争を強いられるスキーム自体は60年以上ほとんど変わっていません。
この本での議論を踏まえて、地方創生の流れをボクなりに整理してみました。
【地方創生の流れ】①の発端は、2040年までに市町村が半減するといった増田レポート(2014年)の「消滅可能性都市」。
地方創生では①を踏まえ、どの都市も②人口増加を目標としています。
どこでも人口減少が進むのに「人口増(社会減に対し現状維持も含む)」を指向しないと、補助がもらえない構造です。
短期的には人口の自然増(出生)は望めないので、③地域間で若年層の社会増(移動)を奪い合うことになります。
この本での地方創生に関する重要な指摘は、以下の3点。
地方消滅自体については、どこかで起こりうるという意識はボクもあります。
問題は政策アイディアや責任は地方に移行して競争を促したものの、それが自治意識の向上につながっていないという指摘です。
地方分権や財源移譲を行わず、中央集権のままでは地域の自発性は生まれない。
それが明らかになったのが地方創生だった、というのがボクの感想です。
もうひとつ、この本の指摘で気になったのが地域間格差。
地方圏から大都市圏に出てきた二世・三世が増えており、「田舎」や「故郷」という概念がなくなってきてます。
かつては地方圏出身の官僚が多かったのですが、今は大都市圏育ち。
官僚の出自が変わっているので、昔の政策立案とは違う指向性を持つという指摘です。
冒頭のインタビューでは、以下のような話も出てきます。
大都市圏と地方圏は、別の人間になってきているので、都会の人間は、「頑張った」「素晴らしい」地方に対してしか応援する気になりません。
地方圏で暮らすことは綺麗事ばかりではないのですが、そこに共感がないのです。
逆、地方圏の人も大都市圏で、例えば貧窮に喘いで孤独死するかもしれないといったスラム街のような無縁社会の問題を理解できません。
東大発オンラインメディアUmeeTより抜粋(一部加工)
この話を読みながら、地方でも同様のことが起きていると感じました。
地方公務員もサラリーマン化し、自市町村の外から通勤する人が増えています。
集落との接点がないため、地元の人たちの言っていることがわからないのです。
状態の深刻さをお互いが理解できない分断がさまざまなところで生じていると感じました。
この本は地方創生の正体を明らかにするのが目的であり、地域がどのようにしていけばよいかの処方箋は示していません。
これ以上市町村や都道府県の合併を進めると、国の直轄管理になり自治機能が維持できないので、多層構造で抑制し合うことが望ましいという意見が述べられているくらいです。
とはいえ、国や自治体や集落、大都市圏と地方圏といった様々な層での交流を深めないとお互いを理解できずに分断が深まりそうです。
地域づくりを通じて自治体や集落などをつなぐ、ボクらのような橋渡し役の存在も重要だとを改めて認識しました。
また、地域の人が「人口増」などの国の意向に囚われず、自ら地域のあるべき姿を描くチカラも要ります。
地域ではこうしたことを地道に取り組んでいくしかないように感じました。
自発的な取り組みこそが地域の持続性につながる。
そう思って、これからも地域づくりに取り組んでいきたいと思います。