コンサルティング

野辺・福の浦地区の地区計画と地域づくりvol.3(甘夏編)

こんにちは、ほんちゃん(@hmasa70)です。

福岡県糸島市の野辺・福の浦地区での地域づくり活動報告の3回目です。

今回は学生たちとはじめた甘夏プロジェクト(仮称)を紹介します。

なぜ、野辺・福の浦地区で地域づくりに取り組み始めたのか?

その背景と活動の取り掛かりを紹介したいと思います。

なぜ地域づくりを行うのか

第2回でも述べたように、野辺・福の浦地区の地域づくりで一番重要なのは、次の地域の担い手探しです。

移住者もいるのですが、中学生以下の子どもたちがいないので、けっこう切実です。

移住者の方々も地域の会合に参加したり、区長を勤める人もいるなど関係は良好。

だからこそ、新しく集落に入る人にはちゃんと地域と付き合ってほしい。

そのための仕組みとして自主ルールづくりに取り組んでいます。

野辺・福の浦地区の地区計画と地域づくりvol.2

2019年5月14日

とはいえ、自主ルールはあくまで地域との相性を見極めるためのフィルター。

野辺・福の浦地区の魅力だけでなく、地域の事情を理解して付き合う人たちにもっと来てもらう必要があります。

そうした人たちと交流する機会を増やし、つながりをつくるのが地域づくり活動の役割です。

学生たちと始める地域づくり

とはいえ、甘夏プロジェクトがそのまま担い手探しにはつながるわけではありません。

まずは事業を通じて信頼関係や協力関係を築きたい。

その経験と実績を通じて、次に移住希望者との接点をつくる取り組みを始めたいという意識です。

学生に協力をお願いしたのは、一人ではプロジェクトが大変なのと、地域に若い人との接点を少しでもつくりたいと思ったから。

地元の会合に小学生の息子を連れていった際、地域が明るく迎えてくれたので、もっと笑顔が生まれる機会を増やしたいと思っていました。

プロジェクトには、次世代ローカルビジネス実践会を通じて仲良くなった子たち3人を中心に協力してくれています。

一緒に地域の状況を調査したり、区長に話を伺いながら、プロジェクトのアイディアを出しあいました。

区長(当時)に地域の状況を聞く学生たち

地域の悩みごとは「交通渋滞」と「みかん」

地域の担い手不足以外で、地元の悩みごとは大きく以下の2つ。

  • 柑橘(みかん)づくりの後継者
  • レジャー客増加による交通渋滞

甘夏は30年以上前から地元の主要産業ですが、高齢化でどんどん耕作面積が縮小しています。

区長(当時)からも、柑橘(みかん)をなんとかできないか、とわざわざ電話をもらいました。

でも正直いうと当初は、区有地の駐車場管理を通じた渋滞緩和のプロジェクトを考えていました。

夏休み期間の社会実験を通じて効果を検証するという企画です。

ボクのバックグラウンドが都市計画で交通問題が取り組みやすかったというのもあります。

でもそれ以上に、柑橘を使った事業を行うには、初期投資が必要になり、在庫を保管する場所の確保や衛生面の問題も発生します。

事業経験がない学生たちと最初に行う事業としては、不確定な要素が多すぎてハイリスクだと思っていました。

とはいえ、駐車場管理だけでは面白みがありません。

他にどんなことができそうか、デザインや加工品づくりなどのプロデュースも手がけているフリーランス仲間にも協力を仰ぎました。

甘夏プロジェクトの立ち上げ

九大の巨大な図書館や前原商店街の居酒屋でミーティングを重ねながら、浮かび上がってきたのは、地元の特徴である柑橘を使ったプロジェクトがしたい、ということ。

夏休みにも海水浴などのレジャー客が多く訪れるので、かき氷を作ることに。

学生たちが補助金などに頼らず、初期費用を自腹で負担するという覚悟もあったので、ボクも腹をくくりました。

ただ、ようやく事業の方向性が決まったのが3月です。

地元に話をしてみると、きよみは4月、甘夏は5月初旬までしかないとのこと。

商品開発を検討する時間がほとんどありません。

慌てて、きよみと甘夏を地元から提供してもらい、試作を急ぎました。

お寺のキッチンを借りた試食会では、各自の試作品と合わせて既成品のシロップと食べ比べ。

地元の柑橘シロップの方が断然おいしい!と急遽参加してくれた女子学生2人にも高評価です。

この試食会はプロジェクトを進める上で、自信をつけるいい機会になりました。

ただ、きよみは糖度が高く、シロップにすると個性が弱く感じます。

一方の甘夏は独特のほのかな苦みが個性的。

甘夏は5月まで確保できることもあり、「甘夏プロジェクト」としてかき氷づくりを進めることにしました。

試食会の食べ比べの様子

甘夏シロップづくりには許可が必要

加工品をつくろうと思うと、避けて通れないのが保健所の許可です。

シロップは糖度が高いので、ジャムと同じように許可は不要なのではと軽く考えていました。

でも、甘かったです。

シロップは清涼飲料水の許可を持つ加工所でつくらないといけないとのこと。

ジュースの工場だと少量生産は対応してくれないし、単価が高くなります。

シロップを自作することで経費を抑えたかったので、正直困りました。

その時、ふと思い出したのが筑前町で加工所をしている事務所時代の先輩。

電話で泣きつくと、果汁を自分たちで搾り、筑前町に持ってくればシロップにできるよ、と受けてくれました。

幸いにも、5月はスケジュールの余裕があるとのこと。

ボクは本当に周りの仲間に恵まれています。

とはいえ、みかんの搾り方もよくわからない素人ばかり。

先輩がたまたま加工指導で糸島に来られる日があったので、時間をいただいて搾り方や保存方法を教えてもらいました。

みかんは熱湯で加熱後、果汁と皮と内皮の3つに分けて保存

甘夏シロップの加工は問題山積

甘夏の加工準備で右往左往する中で、いろいろと気づくこともあります。

その1つが福ノ浦の甘夏は、採ってすぐ出荷するのではなく、貯蔵させていること。

フレッシュさは弱い反面、糖度が増すので濃厚で甘い。

加工のプロの先輩は、「糖度が13度を超えているかも」といっていました。

また、貯蔵した方が搾汁率(全体に占める果汁量)も上がるので、加工に向いていました。

ただ、問題はどれだけの量を仕込むかです。

甘夏1個から搾れる果汁は100mlぐらい。

かき氷1杯にかけるシロップも同量ぐらい必要です。

ということは、1日50杯限定で20日間販売しようと思うと100リットルぐらい。

甘夏に換算すると1000個、箱にして30ケースほど。

数量は見えたものの、その多さに学生たちと呆然となりました。

  • 甘夏はどうやって確保するか?
  • 加工作業の時間はどれだけかかるか?
  • どこで加工作業を行うか?
  • 果汁の保管場所は?

などなど、問題は次から次へと出てくる感じでした。

甘夏を90リットル搾る

甘夏は、小ぶりで加工用のものを地元から提供していただけることに。

加工場所は公民館、果汁の保管場所は漁協の冷凍庫を貸してもらうなど、地元から全面的にバックアップしてもらいました。

とてもありがたいと思う反面、責任を感じます。

ボクたちも労働力をかき集めて、GWや休日を使ってひたすら果汁を搾りました。

最初は8人いても1時間で2リットルしか搾れませんでしたが、最後は3人で10リットル搾るぐらいに効率化し、最終的にできたのは90リットル。

100リットルには及びませんでしたが、学生たちが自宅に戻ってからも夜通しで搾ってくれた成果です。

おわりに

甘夏プロジェクトはまだまだ道なかば。

夏休みの販売に向けて、現在も鋭意準備中です。

「糸島甘夏部」とプロジェクト名を変えて、FBでも随時取り組み状況を発信しているので、よかったら応援してください。

このブログでも、シロップづくりのその後や屋台の検討などについても報告していきたいと思います。

夏休みはぜひ一度、野辺・福の浦に遊びにきてください。

お待ちしています!

ほんちゃん(本田正明)

地方生まれ、地方育ちの40代子育てフリーランス。都市計画の専門家ですが、地場企業や大学、自治体と公民学連携プロジェクトに携わっています。学生たちと農漁村での地域づくりやソーシャルビジネスを展開中。フィールドワーク大好き。福岡県糸島市在住。九州産業大学非常勤講師。

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