地域交流・体験

瀬戸内国際芸術祭の直島にみるアートのまちづくり

こんにちは、ほんちゃん (@hmasa70) です。

アートによる地域づくりの可能性を知りたくて、突然思い立って直島へ行ってきました。

直島と言えば、ベネッセ美術館などもある「アートの聖地」。

どんな人たちが訪れ、地元と関係性は上手くいっているのか、気になっていました。

実際に訪れて見てまわった様子を報告したいと思います。

瀬戸内国際芸術祭が目指すものとは?

瀬戸内国際芸術祭とは、香川県、岡山県の島々を中心に3年に一度に行われている芸術祭です。

テーマは「海の復権」

「島のおじいさんおばあさんの笑顔を見たい」

そのためには、人が訪れる“観光”が島の人々の“感幸“となってほしいという思いが込められています。

どちらにもいい関係をつくりたいというコンセプトに惹かれました。

パンフレットを取り寄せると、12の島々で展示があるとのこと。

見たい展示は山ほどあれど、全部見て回るのはとても不可能。

時間も限られるので、一番有名な直島だけをじっくり見てまわることにしました。


瀬戸内国際芸術祭2019の公式サイトはこちらへどうぞ。
https://setouchi-artfest.jp

宇野駅に降り立つとそこは別世界

直島は香川県の島ですが、岡山県の宇野駅からフェリーで15分ほどの距離。

新幹線と宇野みなと線を乗り継ぎ、博多から約3時間で宇野駅に到着しました。

宇野駅のホームを出ると、ちょっと日本とは思えないくらい外国人が溢れています。

インフォメーションでは、英語だけではなく、スペイン語や中国語などさまざまな言葉が飛び交っていて、日本人が不安になるくらい。

直島へのフェリーの待ち時間で入った居酒屋では、アルゼンチンの夫婦が和食を楽しんでいたり、本当にいろんな国から訪れています。

宇野港自体も瀬戸内国際芸術祭の会場になっていて、海岸に作品がいくつもあります。

中でも「宇野のチヌ」は、目立つ作品です。

赤・黄色・緑・青とカラフルな色合いですが、近づいてよくみると洗面器やタンク、バケツのフタなどプラスチックで出来ています。

説明をみると、宇野港周辺の沿岸で拾い集めたゴミ、漂流物を使ったオブジェと書いてありました。

旅の最初からいろいろと考えさせられる作品です。

アート作品そのものが地域課題を解決する

夕方のフェリーで直島入りしたのですが、夜でも入館できる施設といえば大竹伸朗さんの直島銭湯「I♥湯」。

銭湯がそのままアートになっていて、お風呂に入らないとみられない作品です。

当然、中は撮影はできません(笑)

唯一撮影できる入口付近は観光客だらけでした。

中に入ると、巨大な象が中央に鎮座する独特の世界です。

シャンプーやリンスの色、洗面器のデザイン一つとってもこだわりが溢れています。

湯船につかったり、カラダを洗いながら、それぞれが思い思いに作品を眺めています。

日本の銭湯なのに、日本人が誰もいないというのもなんだか不思議な感じ。

しばらくすると、地元のおじいちゃんたちも数人入ってきました。

直島銭湯「I♥湯」。早朝に写真を取り直しにいったので人がいませんでした。

番台のおばちゃんが話していましたが、銭湯は地元の人たちが欲しかった場所なのだとか。

島民だけの利用だと運営は成り立ちませんが、アート作品として外部の利用も多ければ成り立つのかもしれません。

アート作品そのものが地域のニーズや課題の解決を担っているわけです。

アートに対する固定観念をもっと外さないといけない、と気付かされる体験でした。

銭湯の中の様子が気になる人は下記のサイト参照。
http://benesse-artsite.jp/art/naoshimasento.html

観光客が地元のインフラ維持に貢献している

ゲストハウスのドミトリーに宿泊したのですが、相部屋のシンガポール人が早起きだったこともあり、つられて早朝に街に出ました。

宮ノ浦のまちをうろうろしていると、路地沿いにゲストハウスや飲食店になった家がちらほら。

コンビニは数年前にできたそうです。

住民は3000人ほどで減少は続いていますが、アートによる経済効果は馬鹿になりません。

まちを歩きながら、観光客が銭湯や飲食店、バスなどの地元の生活インフラの維持に貢献しているんだなと感じました。

街なかにアートが溶け込む「家プロジェクト」

直島をアート巡りの観点からみると、ざっくり3つのエリアに分かれます。

1つ目は直島の玄関口であり、直島銭湯「I♥湯」などの作品がある宮ノ浦。

2つ目は集落の中に、アート作品が点在する「家プロジェクト」がある本村。

3つ目は地中美術館やベネッセハウスミュージアムなどの大型施設が集まるベネッセハウスエリアです。

個人的には作品が主張しすぎず、集落に溶け込んでいる本村が良かったです。

大竹伸朗さん「はいしゃ」や千住博さんの「石橋」などの作品もいいですが、一番印象に残ったのは神社そのものをアート作品にした「護王神社」。

新たな神社をアート作品で作っても問題ないという、日本人や漁村のおおらかさが感じられて一番好きでした。

「護王神社」は 地下の石室と本殿がガラスの階段で、一つの世界として結ばれています
暗闇の中で、光を感じる体感型のアート作品「南寺」

ベネッセハウスエリアは、プライベート空間

ベネッセハウスエリアは入口にゲートがあり、警備員もいて、別荘地のようです。

現地を訪れてみて、私有地に巨大な美術館がいくつも立っていることを知りました。

宮ノ浦や本村と違い、こだわりやお金のかけ方が半端じゃありません。

建物は安藤忠雄の設計だったり、モネの睡蓮やバスキアの作品などハイアートな作品が多く見られます。

蔡國強の作品が海岸にぽつんとあったり、ほんとに贅沢です。

空間の使い方や風景のデザインまでこだわり抜かれていますが、でもなぜかそれほど強い印象が残りませんでした。

ベネッセハウスエリアには宮ノ浦や本村のように人が住んでいません。

抽象化されすぎたアートよりも、どこか泥臭くて生活を感じるアートの方が、ボクは惹かれるようです。

直島でさまざまな作品を鑑賞する中で、自分の好みや感性などにもいろいろと気付かされました。

蔡國強の「文化大混浴 直島のためのプロジェクト」
ジェニファー・バートレットの「黄色と黒のボート」。絵画、ミュージアム、海岸の3段構成になった作品。

直島の観光入込客数は年間60万人

一日がかりで直島を見て回ったのですが、正直、人の多さに驚くばかり。

観光入込客数をみると、芸術祭のときは年間60万人を超えています。

人口3千人の島に1日あたり2千人近くの人が訪れている計算。

キャパシティをオーバーしていないかと心配になります。

飲食店などの店舗は、地元の人が営んでいるところが多く、素朴な感じです。

交通アクセスや人材確保が難しい島という環境のおかげで、外部資本が入りにくいのかもしれません。

とはいえ、新しい店舗の準備をしている住宅も見かけたので、経済は順調に回っているようでした。

ただ今回の旅で残念だったのは、地元の人たちとの接点がほとんどなかったこと。

飲食店やゲストハウスなどの施設以外には、ほとんど会話する機会がありませんでした。

唯一、小学生の通学を見守る地域の人たちとの挨拶を交わしたことぐらい。

次回、瀬戸内を訪れる際には、一般の住民の人たちがどのように生活の中にアートや芸術祭を受け入れているのかをぜひ聞いてみたいと思います。

ほんちゃん(本田正明)

地方生まれ、地方育ちの40代子育てフリーランス。都市計画の専門家ですが、地場企業や大学、自治体と公民学連携プロジェクトに携わっています。学生たちと農漁村での地域づくりやソーシャルビジネスを展開中。フィールドワーク大好き。福岡県糸島市在住。九州産業大学非常勤講師。

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