こんにちは、ほんちゃん(@hmasa70)です。
福岡県筑前町に「みなみの里」という農産物直売所があります。
周辺エリアは、道の駅うきはや三連水車の里あさくらなどの直売所が7箇所も集積する激戦区。
みなみの里は後発であり、交通アクセスが不便な場所であるにも関わらず、年々売上を伸ばしています。
そもそも、条件が不利な場所でなぜ直売所を始めたのでしょうか?
そこには町長の思いや運営する人たちの熱意がありました。
ボクがみなみの里を知ったのは2014年。
以前所属していた事務所の先輩が、ジュースなどを製造できる加工所を筑前町にオープンしたので見学に行きました。
その際、みなみの里と運営に関わる福丸さんを紹介していただきました。
それから5年。
まさか自分が甘夏の加工をしてもらうために、先輩の加工所を再び訪れることになるとは思ってもみませんでした。
みなみの里からお弁当を配達していただき、福丸さんにも再会。
ボクが非常勤講師をしている大学が母校という偶然も重なり、講義でみなみの里の取り組みを紹介してもらいました。
筑前町では、「筑前クロダマル」という黒豆の地域ブランドづくりに取り組んでいます。
2019年は12月21日が販売の解禁日。
福丸さんの計らいで講義を受けている学生たちと、一緒に解禁イベントに参加させてもらいました。
みなみの里の場所は、福岡市の中心部から車でちょうど1時間ぐらい。
冒頭にも書いたとおり、国道から一本奥まった場所にあるため、なかなか一般の人には気づきにくい場所にあります。
一緒に学生を引率してくれた先生は、直売所めぐりが趣味なんだそうですが、みなみの里には「初めてきた」のだとか。
立地によって、場所を認知してもらうことがいかに大変かを改めて感じます。
現地につくと、さっそくみなみの里や地域ブランドの取り組みについて伺うことに。
ありがたいことに田頭町長がわざわざ、学生たちと話す時間を作ってくれました。
印象に残った話をいくつか紹介したいと思います。
「当時、私が直売所をつくるというと周りは反対ばかりでした。今更、なぜ直売所なのかと。もっと先にやることがあるのではないかと」
「なぜ国道沿いに立地しないんだとも言われました。ここは過疎地なんです。地域振興のためにやりたいということをずっと言い続けました」
近くに小さな直売所があるそうですが、なぜ行政が民業圧迫するのかとか、直売所がうまくいかなければ葬祭場にすればいい、などとも揶揄されたそうです。
「反対者はみんな正論です。それを上回る意義や熱意がないと地域づくりやまちづくりはできません」
「民間の小さな直売所に対しても、もっと多くの地域の人たちに貢献したいという話を丁寧に続けました。そのおかげで今では共存共栄の関係が築けていると思います」
「賛成多数で始める事業はうまくいかないことが多いでしょう。反発が多いと失敗できませんから、覚悟が違います」
地域で新しい事業を立ち上げるには一筋縄ではいきません。
立ち上げの苦労や継続の難しさとともに、首長の覚悟や思いを直接話を伺えたことは、学生たちにも貴重な機会でした。
筑前町の主な農産物はというと、米・麦・大豆。
お世辞にも特徴的な農産物とはいいがたいものばかりです。
周りにはフルーツの産地がいっぱいありますが、みなみの里は地域外からの仕入れはほとんどしていません。
地域にあるものを活かすということを徹底しています。
麦・大豆・米であれば、加工に向いていることから加工品づくりに熱心です。
直売所の中に加工所があり、米粉パンや豆腐、みそなどの加工品が 数多く並んでいます。
またレストランでは、はがまで炊いたご飯を提供するなど、どうすれば魅力的な商品になるかを丁寧に考えられています。
また農家以外の出荷者を増やそうと、起業や加工のセミナーも定期的に開催しています。
実際に受講生が7人ほど新規に出荷者登録してくれたとのこと。
また、大豆をきなこに一次加工して、地元の商工業者に使ってもらうなど、裾野を広げるための取り組みも進められています。
ないものねだりではなく、地域にある人や資源を活かすことにこだわることで、 現在の地域への還元割合は売上の8割以上。
売上や集客の面では大規模なスーパーに及ばなくても、地元への波及という面では非常に大きな効果を生んでいます。
今では、筑前町の地域ブランドとなっている「筑前クロダマル」。
田頭町長が温暖な気候での栽培に適した黒豆の新品種ができた、という小さな新聞記事を見つけたことがきっかけだったそうです。
栽培当初から生産組合を立ち上げ、種子の管理や栽培方法を統一したり、商標登録なども進めています。
黒豆で有名な丹波篠山にも出かけて、地域ブランドづくりを学んだそうです。
そのときに勧められたのが、「解禁日」の設定でした。
解禁日を設けることで、ブランドの品質や流通管理がしやすいだけでなく、認知度も高めやすくなります。
モノをつくるだけでなく、期限や期間を設定することもブランド化につながることを教えてもらいました。
生産者や出荷者の高齢化は、全国の直売所が抱える課題です。
地域を持続していくためには、出荷者だけでなく消費者にも若手の参入が不可欠です。
みなみの里も例外でないのですが、その課題に正面から向き合っています。
直売所が新規事業にチャレンジする場所になり、 若手の育成の場にもなる。
こうした循環を生み出す環境づくりが、地域においてますます重要になると感じました。