こんにちは、ほんちゃん (@hmasa70) です。
フットパスってご存知ですか?
もともとはイギリスで生まれたもので、歩くこと【Foot】ができる小径(こみち)【Path】のこと。
ブラタモリのように、地域に昔からある風景を楽しみながら歩きます。
どこでも気軽に取り組めるので、地域づくりの一貫としてじわじわと広がっています。
フットパスに詳しい後輩から、九州では熊本県美里町が熱心に取り組んでいると聞き、さっそく体験してきました。
美里町からフットパスを全国に広められている井澤るり子さんにガイドをしていただき、お話も伺いました。
フットパスに興味がある人は、参考にしてください。
美里町のフットパスコース
美里町は熊本県の中でも八代市に近い南部の町。
南方には山々が連なり、裾野に田園風景が広がるのどかなところという印象です。
美里町のフットパスは全部で15コース。
3年間かけてつくったんだそうです。
里山やため池、石橋を巡るものまで、さまざまなコースがあります。
美里町のフットパスは①小崎棚田コースが有名です。
ただ、コースとして完成されすぎていて、他の参考になりにくいとのこと。
それで今回は砥用(ともち)まちなかコースを歩くことにしました。
参加者が主体的に歩くフットパス
集合場所の美里町文化交流センターでは満開の八重桜がお出迎え。
暑くも寒くもなく、汗をかかない程度のちょうどいい気候です。
参加者は、ボクの家族と後輩のフットパス仲間など総勢8人。
自己紹介もほどほどに、さっそくスタートしました。
春の陽気でチョウチョやてんとう虫などが多数飛び交っていました。
我が子たちは歩くより虫取りやたんぽぽのタネ飛ばしに夢中。
気がつくと先頭との距離があっという間に広がります。
早く追いつこうとしていると、「全然、気にしなくていいよー」との声。
フットパスはウォーキングみたいに、歩くこと自体が目的ではありません。
主体的に面白いことを発見しながら歩くのがいいのだとか。
「遅れる人が一番楽しんだ人ですよ」
ガイドの井澤さんの言葉に、フットパスらしさがにじみでていました。
地域も主体的に協力する関係づくり
コースを歩きながら感じたのは、とにかく風景が変化すること。
川の景色がなくなったと思ったら、製材所があったり、住宅地の坂を登りながら芝桜やお茶畑の景色が広がったり。
この道は、どんなところにつながっているんだろ?
子どものころ、道草しながら初めて通った道のワクワクを思い出しました。
「歩くことが目標になったらいかんのよ」
直線的な道だと、あそこまで歩くんだという目標を無意識に決めてしまうもの。
自然とたどりつけるよう、曲がりくねった道があえて選んでいるのだとか。
1つのコースを決めるのに10回以上は歩いているそうです。
下見のときも、出会った人たちにフットパスの意図を話したり、道を教えてもらったり。
井戸端での口コミを通じて、地元に自然とフットパスのことが広まっています。
シクラメンの栽培農家さんに話かけたときも、フットパスで来たというと、ああといって見学させてくれました。
「急いでコースをつくると、あんたたちのフットパスとなるでしょ。地元の人にフットパスは自分たちのものと思ってもらうのが大事なんです」
美里町のフットパスコースは、地元が日常的に草刈りなどの維持管理をしているところを選んでいます。
喜んで道を管理してくれるように、参加者の声を届けたり、地道な関係づくりをされています。
プットパスのガイドはサポーター
11時から歩き始めたので、途中は昼ごはんで一息。
料理が出るまでの間、しばらく時間があったので、井澤さんにフットパスのことをいろいろと伺いました。
気になったのは、ガイドがほとんど説明しないこと。
マップには追分の碑などの史跡も記載してありますが、歩いているときはほとんど触れません。
「ホントは歴史が好きなんですよ。石橋のガイドもしていますから。でもフットパスのガイドは、『自由に歩いていいよ』というのを教えるサポーターなんです」
知識を話すことより、地域の思いを伝えることを大切しているのだそう。
一緒に歩いていても、こちらが話しかけてくるのを待つ感じでした。
「どうしても話したいときはね、立ち止まってジッと見るんですよ。そうすると向こうから何ですか?って聞かれますよ(笑)」
参加者にしても地域にしても、主体性の引き出し方については井澤さんにはかなわないな、と思いました。
でも歴史散策やまち歩きと違って、おしゃべりしながら歩くのは新鮮でした。
情報よりも感覚で風景の移り変わりや地域の人たちとの語らいを楽しむ。
歩くというシンプルな行動もまだまだ奥深い世界があります。
プットパスは地域の人が主役
美里町では、実は各コースで年1回ほどしかイベントを行っていません。
コースの中にはイベント自体がないコースもあります。
イベントをすると運営が大変だというのもありますが、セルフで歩く人を増やしたいのだとか。
イベントだと参加者がどうしてもスタッフに話しかけるので、地元の人たちが主役になれません。
セルフで歩くと地元の人たちがガイド役になるので交流が生まれます。
遠くからきた人たちがここがキレイとか楽しいというと、地元の人たちも自信になるんだそうです。
さいごに
「フットパスはどこでもできる取り組みでしょう?」
スタート地点の文化交流センターに戻る途中に井澤さんから聞かれました。
ボクの答えは半分イエスで、半分ノー。
正直、フットパスがここまで地域や参加者の主体性を意識した取り組みだとはまったく知りませんでした。
たしかに補助金を使ったり、勢いでやろうと思ったらどこでもできます。
ただ地域に定着する草の根の活動にしようと思ったら、時間と根気が必要です。
「子育てと一緒。手間がかかります」といわれましたが、ほんとにそう。
何より主催者が楽しみながらやらないと続きません。
でもフットパスの魅力にちょっとハマった感じもします。
まずは趣味として、九州のフットパスコースを歩くことから、始めてみようかなと思います。
※フットパスのコースはオンライン非公開です。
・美里フットパス協会