こんにちは、ほんちゃん(@hmasa70)です。
2022年も野辺・福の浦地域で糸島甘夏堂のかき氷屋台を営業しました。
地域共創的なプロジェクトに取り組み始めてからはや4年。
毎年新しいことにチャレンジしていますが、今回は営業場所を移転し、駐車場管理をしながら営業することに。
元の場所から300mぐらいしか離れていませんが、環境はまったく違います。
失敗も含め、いろいろと経験させてもらいましたので、その内容をご報告します。
きっかけは渋滞緩和
営業場所を移転するきっかけは、野辺・福の浦地域の渋滞問題です。
福の浦は集落を通り抜け道路がなく行き止まりなので、来訪者が増えると慢性的に渋滞が発生します。
漁師も車で港に漁具などを運ぶため、渋滞は地元の産業にとっても死活問題です。
そもそも学生たちが最初に提案したプロジェクトは駐車場管理でした。
なので、当初の企画を4年目にしてようやく実現したともいえます。
4年目にして、なぜ駐車場のことが動き出したかというと、その背景には地区計画があります。
私が野辺・福の浦地域に関わるきっかけも地区計画でした。
※地区計画の詳細については下記ブログを参照
地区計画の内容は簡単にいうと土地利用の緩和です。
福の浦がある志摩地区は、糸島でも人気が高いエリアですが、土地利用規制が厳しいので、飲食店などがほぼ立地できません。
それが海が目の前に見えるという立地環境で行えるようになったため、事業者や不動産会社が土地取引を持ちかけるようになりました。
困ったのは地元です。
飲食店などの事業者が増えれば、来訪者も増えます。
渋滞緩和のために、駐車場を増やそうと地主に土地提供を求めても、事業者がすでに手をつけていたり、土地の値段も上がっていて話が進みません。
集落の担い手となってくれる人を増やしたくて土地利用を緩和したのに、移住者よりも事業者や来訪者と渋滞が増えるという皮肉です。
そこで少しでも駐車台数を増やそうと話が出てきたのが区有地の再整備でした。
手付かずで荒れた区有地
この区有地は、以前は駐車場として管理していたそうです。
人手不足や費用の不足などもあり、放置されていました。
草などが伸びていて荒れた状態。
草刈りをしてラインを引いたり、きちんと整備をし直せば、10台ぐらい駐車台数は増やせそうでした。
問題はその整備の費用です。
当初は法人格を持つ組織を作って、機械で無人管理しようと考えたのですが、整備費も考慮するとかなり高額になります。
一方で繁忙期以外には、それほど利用が見込めません。
甘夏堂の学生たちに負担させるわけにはいかないので、駐車場管理は私個人の責任で行うことにしました。
事業者などに協力を募って事業をしようとすると、
「お金かけんでよかよ。草刈りも地元で手伝うけん」
「無理のない範囲でやって、機械の費用を貯めればよかたい」
そういう地元からの声もあって、できることから始めることに。
結果として利用者が想定より伸びなかったため、無駄な投資をせずに済みました。
小さくスタートすることの大切さを改めて感じました。
区有地の管理はだれのものでもない
とはいえ、ことは簡単に進みません。
見晴らしや駐車場台数の確保のために、区有地の真ん中の樹木を切りたかったのですが、相談しても渋い顔をされてOKが出ません。
よくよく聞いてみると、「木を切ると呪われるらしか」「見る人がみると出るらしい」という話。
今時そんな理由でか、と思いましたがそこまで言われるとさすがに木は切れません。
ただ剪定は大丈夫ということなので、樹木回りをキレイにすることで折り合いました。
区有地の整備の協議には、正直えらく時間が取られました。
後で気づいたのですが、区有地はみんなのものなのですが、今の時代に合った利用目的がはっきりとしていません。
どういう整備や利用なら区にとって大丈夫なのか判断材料がないので、集落としてなかなか決断できないのだと感じました。
「本田君がやろうって動かんかったら、荒れたままやったよ。ありがとう」
清掃中に地元の人からそんなふうに声をかけてもらうことも。
外部の人間の方が地域にとって動きやすい場合もあるようです。
甘夏堂との役割分担
やると決まってからは、コトが動き出すのは早いもの。
甘夏堂のメンバーは上記したように、駐車場管理を提案してくれていたので、移転営業を快く引き受けてくれました。
業務は増えますが、人件費1分を駐車場管理で負担したのでお互いにメリットがあります。
駐車場のトラロープや看板なども学生たちが率先して整備してくれました。
気になっていたのは電気をどこから取るかです。
漁港で営業していたときは、倉庫の電源を延長コードで借りれましたが、区有地の近くには建物がありません。
「ソーラーパネルをつくったら?」などと冗談でいっていると、
「小さいけどソーラーパネルならあるばい」
「バッテリーなら余っとる。あとはインバーターやな」
と地元の人たちがあっという間に材料をかき集めてくれました。
倉庫も近くにないので、屋台の移動や保管も困ります。
すると今度は余った軽トラも使わせてもらえました。
学生たちはさっそく喜んで移動式の屋台を作り上げるというスピード感。
この辺りは4年間の活動の蓄積もあり、地元とあうんの呼吸で準備が進みます。
結果的に、かき氷の注文が殺到したとき、電源が足りなくなっため、軽トラのバッテリーが非常電源としても助かりました。
実際に営業してみて
営業場所を移転したと書きましたが、もともとの場所と300mぐらいしか離れていません。
とはいえ、その変化は大きいものがありました。
なんといってもお客が少ない。
以前の漁港であれば、何もせずとも釣り客やまたいちの塩のお客さんがぶらりと立ち寄ってくれました。
今回の場所はそうした立ち寄りがほとんどありません。
漁港でも甘夏堂のチラシなどPRさせてもらえたので、後半は立ち寄り客も徐々に増やすことはできました。
一方で良かった面もあります。
海で半日ほどのんびり過ごす人が多かったためか、お客さんとの会話が増えました。
駐車場の料金支払いついでにかき氷を買ってもらうことも多く、感覚的には以前の3倍ぐらいはあります。
昨年はジュースを購入できなかったというリピーターに喜ばれたりすることも。
後で漁師さんたちに聞いたのですが、漁港の利用者も減ったらしく、ほとんど満車にならなかったそうです。
そんな中、最終的には前年と同程度の売り上げることができました。
駐車場管理も大きなトラブルもなく無事終了。
イニシャルコスト分は赤字でしたが、2、3年で回収する目処が立ったのでぼちぼちだと思います。
次年度に向けての課題
場所を移転して営業し駐車場の管理も行えたのは、一つの成長かなと思います。
ただ、実は来年はもっと大きな壁にぶつかります。
これまでメインで関わってきてくれた学生たちのほとんどが卒業してしまうからです。
学生プロジェクトの難しさは、なんといっても事業の受け継ぎ。
デザインや販売手伝いだけでなく、事業の運営管理を行えるマネジャーはそう簡単には育ちません。
とはいえ、運営を担ってくれた子たちが何人か福岡に就職し、OBとしても手伝ってくれそうです。
次年度はメンバーの刷新で正念場を迎えますが、新しいチャレンジでもあるので楽しみながら取り組みたいです。