宗像市日の里団地のさとづくり48プロジェクト

ひのさと48プロジェクト外観 地域づくり事例

こんにちは、ほんちゃん (@hmasa70) です。

宗像市で「さとづくり48」というプロジェクトが進んでいます。

舞台が日の里団地なので、まちづくりではなく「さとづくり」。

生活利便施設として改修された住棟が48号棟だったことから、この名称になったのだとか。

エリアマネジメント研究会でもお世話になった方々が多く関わっています。

オープニングイベントに招待され見学したので、その取り組みをご紹介します。

高齢化と人口減少が進む日の里団地

日の里団地は、1965年頃に開発が始まった宗像市の住宅団地。

面積は217.6haという広大な敷地で、最盛期には2万人以上が住んでいたそうです。

ただ現在は人口は1.1万人とほぼ半減しており、高齢化も35%と高くなっています。

建物の老朽化が進み、空室も目立つようになりました。

そこで東街区の住宅10棟を集約し、新たにコミュニティ拠点と緑豊かな居住空間を合わせ持つ団地再生の取り組みが2020年にスタート。

48号棟を新たなコミュニティ拠点「ひのさと48」として、最初にオープンしました。

さとづくりのイメージコンセプト
さとづくりのコンセプトイメージ
さとづくり48のプロジェクトの詳細については、下記のサイトをごらんください。

・さとづくり48(公式ウェブサイト)

48号棟をリノベして始まったプロジェクト

東街区全体は住宅メーカーなどの10社による共同企業体が、戸建ての住宅地などを今後整備していく予定です。

旧住宅棟である48号棟は、コミュニティ拠点「ひのさと48」として西部ガスと東邦レオが中心に運営しています。

建物は特定目的会社(SPC)をつくってUR都市機構から買い取ったり、管理は東邦レオがSPCから再度賃貸借契約を結んでいたり、となかなか複雑な事業スキーム。

ただ良いと思ったのは、ガスや電気・植栽など、住宅ができた後も関係が続く事業者が携わってくれていることです。

地域づくりの活動は、初動もですが継続的な関与が大事。

運営事業者とも長いつきあいができるコミュニティは心強いと感じました。

トモニハデザイン

住宅地の緑を守り、まちを育てる東邦レオの取り組み

2019年3月7日
ひのさと48の事業スキーム
ひのさと48の事業スキーム

拠点ができる前からのコミュニティづくり

さとづくり48プロジェクトの地域との関わりは、実は施設がオープンする随分前から始まっていました。

地元の小中学生たちに、日の里団地で実現してみたいことを「ひっさつわざ」という形で募集したりしています。

しかも、重要なのは単なるアイディアで終わらせていないこと。

例えば、 子どもたち発案の「クライミングウォール」というアイディアをクラウドファンディングによって実現しようとしています。

そうした大人の本気さというものは、子どもたちにも伝わるようです。

あるとき、地元の子どもたちが主体的に集まり、スタッフらと一緒にペンキ塗りを手伝っていたのが印象的でした。

面白がりながら行動し続けていると、熱意を持った人たちが自然と集まってくるのかもしれません。

クライミングウォールのクラウドファンディング
クライミングウォールのクラウドファンディング

団地の一室でクラフトビール製造

ひのさと48には、保育園やコミュニティカフェ、DIY工房などが入居しています。

中でも異彩を放つのが「ひのさとブリュワリー」。

団地の一室で、クラフトビールの販売だけでなく、製造も行っています。

なぜ、わざわざクラフトビールを作るのか?

その答えは、「地域の会話量を増やす!」というひのさと48のテーマにありました。

正直、団地の一室程度の規模であれば生産量も限られてしまい、儲けはほとんどありません。

でも、地元産のクラフトビールがあれば、人も集まってくるし、会話も弾みます。

コミュニティとの関わりを強化するツールとして、ビールを活用しようというのが狙いなんだそうです。

とはいえ、そのための設備投資額はかなりのもの。

とても個人が遊びで負担しきれるような額ではありません。

企業がこの「さとづくり」に本気だからこそ、可能になった事業だと思いました。

ひのさとブリュワリーではビールの購入もできる
ひのさと48のクラフトビール「さとのBEER」
ひのさと48のクラフトビール「さとのBEER」

糸島産甘夏もビールづくりにコラボ

ひのさとブリュワリーの醸造責任者を務める馬込さんは、実はこのプロジェクトの前からのつきあい。

友人の結婚式で知り合い、鹿児島の同じ高校出身ということもあり、仲良くさせてもらっています。

オープニングイベントの際には、柑橘系のビールを醸したいという話で意気投合しました。

柑橘の味は発酵過程で消えてしまうので、香りが豊かなみかんの方が相性がよいのだとか。

となれば、甘夏です。

シーズンが終わりかけだったので、慌てて農家さんに連絡してみかんを分けてもらいました。

しかも、糸島甘夏堂の学生たちと一緒にクラフトビールづくりも体験することに。

朝8時から夕方6時までひたすら一室に籠もりっきりというハードな作業でしたが、参加した学生たちは貴重な経験ができたと満足そうでした。

生産量も限られるため、今回、糸島甘夏堂では販売しません。

でも近い将来、オリジナルのクラフトビールをつくりたいと仲間で盛り上がりました。

味については、またどこかで感想を書きたいと思います。

ひのさとブリュワリーの醸造責任者の馬込さん
ひのさとブリュワリーの醸造責任者の馬込さん
学生たちが甘夏ビールを仕込む様子
学生たちが甘夏ビールを仕込む様子

住宅地の整備はこれから

生活利便施設である「ひのさと48」はオープンしましたが、住宅地の整備はまだこれからです。

ブリュワリーからは、いつも土を運ぶ重機の姿が見えます。

この住宅地も、垣根のない森に囲まれたような戸建て住宅地を目指しているので、どのような形になるのか完成が楽しみです。

コミュニティづくりの観点からも、新たに住む人たちが地元の人たちとどう溶け込むのか気になります。

まだまだ、日の里プロジェクトの取り組みから目が離せません。

新作のクラフトビールを目当てにしながら、これからも定期的に通いたいと思います。

ビールを片手に団らんする人たち(奥の敷地に住宅地を整備中)