糸島の空き家(古民家)再生プロジェクト(準備編)

ボランティアで古民家の片付けをする様子 プロジェクト

こんにちは、ほんちゃん(@hmasa70)です。

糸島の岐志浜という集落で、旧志摩町史にも載っている古民家の空き家再生のお手伝いをしています。

そもそものきっかけは、集落の方々の菩提寺である海徳寺の松月さんから、「空き家の活用の相談に乗ってほしい」と連絡を受けたことでした。

ちょうどそのころ、私は福岡県の空き家関係の業務を手伝っており、空き家活用モデル普及促進事業の募集を行っていました。

宣伝を兼ねて説明に行ったのですが、まさかそのときは、自分も当事者になるとは思ってもみませんでした。

集落の中心にある古民家の空き家

空き家となっている古民家は、岐志浜集落のちょうど真ん中にあります。

土井良丈文さんが以前は住んでいたそうですが、1年ほど前に亡くなられて空き家になったそうです。

屋根裏の梁が太く、登録文化財級の住宅で正直驚きました。

海徳寺では以前から週1回ほど地域の人たちが集まっておしゃべりをする居場所づくりを行っています。

ただ、お寺の場所が集落から離れているため、高齢者の方々は家族の送迎が必要になります。

自分の足でも気軽に通える身近な場所で開催してほしいというのが、地域の方々の願いでもありました。

私が関わり始める前から、特別養護老人ホームなどを営む志摩園さんが空き家を活用して認知症カフェ(後におこもりカフェ)の実施を検討していました。

しかし、建物の改修や維持管理については専門外なので悩まれていました。

そこで、家主や海徳寺の方々と一緒に建物の維持管理を行う別の母体をつくり、志摩園さんには場所を借りてもらうことにしました。

この母体(のちに旧土井良丈文家住宅管理運営会議)の立ち上げのお手伝いをしているうちに、いつの間にか私も当事者になっていました。

都市計画の用途変更が面倒な市街化調整区域

土井良家住宅は市街化調整区域にあり、住宅以外の店舗などへの用途変更は基本的にはできません。

住宅として貸し出すことはできるので、空き家の再生も賃貸住宅が望ましいと思っています。

しかし、おこもりカフェの話がすでに動いており、地域の方々の期待もあります。

福岡県都市計画課に相談したところ、集会所は準公共的な施設なので、県の支援(補助)があれば、開発許可が下りやすいという話をいただいたこともあり、県の空き家活用モデル普及促進事業の支援を受けて事業を進めています。

補助金が切れたら事業をできないという事態にならないよう、運営母体のメンバーが出資でできる範囲内で計画をつくりました。

建物の劣化状況も知り合いの棟梁らに見てもらいましたが、ほとんど問題なく、雨漏りもほとんど見られないので、改修費用をあまりかけていません。

片付けも家主の親族や近所の方々、志摩園のスタッフ、助成をいただいた県の職員の方々らと一緒に行いました。処分に困った仏壇用品は海徳寺が引き取ってくれました。

印象的だったのは、片付けが終わるころ、家主の親族の方々が「建物も綺麗になったし、丈文さんの一周忌や忘年会に借りたいね」と話していたことです。

片付けをするだけでも、また人が集まってくれ、場が再生できるのだと感じました。

片付けの最中の様子。全部で1トンあまりの家財道具を搬出しました。

住宅以外には使えない市街化調整区域の制度

今回のプロジェクトで、特に時間がかかっているのが開発許可の申請です。

都市計画の専門家であっても、手続きの手間と面倒くささには驚きます。

そもそもすでに建物が建っているのになぜ、宅地造成などの際に必要な開発許可が必要なのだろうか?

という疑問は、手続きが終わっても消えませんでした。

市街化調整区域によって開発を制限することで、市街地に人や施設を集約する考え方は否定しませんが、農村や漁村集落の維持していくための制度は必要だと思います。

市街化調整区域では、既存の住宅(たとえば空き家)を住宅以外にはほとんど利用できません。

都市計画の制度に柔軟性がなさすぎて、空き家を活用しようにも幅が狭すぎます。

土地利用制度が住民生活から乖離しすぎないよう、まだまだ見直しの余地があると感じました。

空き家再生の取り組みはまだまだ始まったばかりです。

次回は、旧土井良丈文家住宅を使ったおこもりカフェなど、具体的な取り組みの内容を紹介したいと思います。

岐志浜の漁村の古民家

糸島の空き家(古民家)再生プロジェクトその2(開発許可編)

2016年2月23日
きしはま邸の七夕まつり集合写真

糸島の空き家(古民家)再生プロジェクトその3(活用編)

2017年1月13日

最後まで残っていただいた片付けメンバーと一緒に記念撮影