こんにちは、ほんちゃん(@hmasa70)です。
糸島で空き家を活用した九州大学の学生寮といったら「熱風寮」。
九州大学のOBでもある大堂さんが営んでいます。
ご自身の寮生活の経験を活かして事業を始めたそうです。
現在は学生寮のみならず、ゲストハウスやカフェ、シェアオフィスなど複業的に事業を拡大しています。
今や空き家活用のスペシャリスト。
ボク自身も空き家活用に取り組んでいますが、オーナーとの交渉や事業継続で悩みがつきません。
どのように空き家活用事業を展開しているのか、聞きにいってきました。
都市計画のブログを通じて知り合う
実は大堂さんとボクの付き合いは、学生寮の運営が始まる以前から。
そもそも知り合うきっかけになったのは、このブログでした。
ボクは地域のたまり場として空き家利用を手伝っていますが、市街化調整区域にあるため都市計画の用途変更が大変でした。
大堂さんが最初に手掛けた寮も糸島市の市街化調整区域にある物件。
都市計画の制度や手続きを教えてほしいと、東京からわざわざ訪ねてくれました。
それがご縁でボクの大学講義に登壇してもらうなど、関係が続いています。
学生寮に取り組むきっかけは自分の原体験
大堂さんはもともと東京で10年近く商社マンをしていました。
学生時代に経験した価値観の異なる人たちとの出会いや共同生活の良さを伝えたいというのが、事業に取り組むきっかけなのだとか。
移住する前は、学生寮を運営するNPOに勤めてノウハウを学んだそうです。
とはいえ、最初から実績や信用があるわけではありません。
一棟目のプロジェクトに至るまでは、30軒ほど物件を探してまわったそうです。
「オーナーが教育関係者だったので、学生寮に対して好意的でした」
理解者に恵まれたことも事業を進める上でプラスだったようです。
「ただ建物が大きかったので、投資もだいぶかかりました。今、同じ投資ができるかというと難しいと思います」
というように、大きな古民家の改修にはリスクも伴います。
すべての条件がそろうような理想的な物件は、まずありません。
何かを犠牲にしても事業を進めるという決断が、どこかで必ず必要なのだと感じました。
空き家を活用した事業展開
「古民家を学生寮に活用した」という珍しさもあり、yahooのトップニュースなど、メディアにも多数取り上げられました。
「当時は個人や行政などから問い合わせや相談が増えました」と、実際に事業に結びつく相談も多かったそう。
一棟目のプロジェクトが宣伝役になり、次の営業にも繋がっています。
「空き家でもきれいな物件が多かったので、投資額もかなり抑えられましたね」というように、物件にも恵まれたことが次々と事業展開できた要因でもあるようです。
驚いたのは、2棟目の寮が古民家ではなく、最近の戸建て住宅だったこと。
田舎で利活用できる空き家は、移住ニーズが高い古民家に限られるケースが多いのですが、学生寮の場合だと戸建て住宅でも十分ニーズがあるようです。
パートナーたちと事業に取り組む兼業モデル
冒頭に書いたように大堂さんは学生寮のみならず、ゲストハウスやカフェも運営しています。
自分一人ではなく、それぞれ違うパートナーと事業に取り組んでいるのが特徴的です。
「実はカフェの運営のパートナーは学生です。自分が出資してもやりたいといってきたので一緒に始めた感じです」
学生が150万円ほど出資したと聞き、驚きました。
ボクは海外旅行をしたくてバイトで貯めた100万円を使いましたが、今の学生は起業や事業に使うようです。
「1軒あたりの収益は下がるんですけど、自分の時間が確保できるんですよ」という視点も面白いと感じました。
パートナーのそれぞれが兼業や副業のように、事業に取り組んでいます。
事業を分散してリスクヘッジを行うのは、これからの地方での働き方のモデルになりそうです。
「ただ、カフェに関しては時間も取られますし、収益もまだまだ足りないですね」というようにすべての事業が順調なのではなく、苦労もあります。
【プロジェクトの変遷】 2017年9月 熱風寮1棟目(桜井) 開寮 2018年3月 熱風寮2棟目(馬場) 開寮 6月 古民家ゲストハウス「糸結」 オープン 9月 空きテナントを活用したカフェ&バー「マルベリーハウス」オープン 2019年3月 熱風寮3棟目(篠原) 開寮 7月 コワーキングスペース「糸島よかとこラボ」をオープン(有田病院2F) 8月 熱風寮4棟目(周船寺) 開寮
学生たちとのコミュニケーション
学生寮は他人との共同生活なので、ルールづくりや人間関係への配慮もいります。
不満がたまらないように、イベントやSNSなどを通じてコミュニケーションを図っているそうです。
学生同士のトラブルが気になったのですが、「田舎暮らしや共同生活を希望する子たちはそもそも少数派で、コミュニケーション能力が高い子たちが多いので問題はないですね」とのこと。
そもそも集落での共同生活という時点で、かなりのフィルターがかかっているようです。
学生同士のコミュニケーションだけでなく、なおらいなどの地元の会合にも顔を出すなど、地域の関係づくりも丁寧に行っています。
運営者側には丁寧なコミュニケーションや話しかけやすい人柄なども重要な要素だと感じました。
小規模な学生寮はこれから可能性がある
最後に大堂さんに今後の展開を伺うと、意外な返事が返ってきました。
「実は、学生の生活コストを抑えられる住環境は まだまだ 不足しています」
九州大学の周辺には学生寮の数はありますが、実は一部の学生を除いて 1年で出ないといけないところがほとんどなのだとか。
「2年生になると寮を出ないといけません。ですが、次に入れる物件がないんです」というように寮生の2年目の壁が存在しています。
また、学生マンションの供給が追いついていないため、キャンパス周辺の家賃が高騰しているそうです。
「最初にメディアに取り上げられた際、寮にも新規参入者が出てくると思ったんですが、意外にも全然出てきませんでした」
移住者向けに空き家の活用を手掛ける人は増えていますが、学生寮の運営となるとハードルが高いようです。
「糸島以外でも寮を運営してもらえないかと相談があるんですが、正直難しいです」というように資本も時間も限られるので、個人で手掛けられる寮の数は限界もあります。
「今後は同じ志をもった人、寮運営を行う仲間もつくっていきたい」というのが大堂さんの展望でした。
さいごに
学生寮運営は学生や地域との丁寧なコミュニケーションが必要で、利益もけして大きくはありません。
ですが、一定のニーズはあるので安定的な収入につながります。
可処分時間も多いので、副業的、兼業的に働けるし、地域に関わることもできます。
これからの社会の担い手となる学生たちとも関われるし、学生寮を通じて地域のプレーヤーを育てられたら楽しいね、と盛り上がりました。
ちょっと本気で学生寮事業を通じて、これからの地域を支える仲間づくりに一緒に取り組んでみようかと思います。
もし、興味がある人がいたら、一報いただけるとうれしいです。