地域の思いを伝える「暮らしのガイドブック」づくり

立石山からみた福の浦地区の遠景 コンサルティング

こんにちは、ほんちゃん (@hmasa70) です。

緩和型地区計画の策定のお手伝いをした野辺・福の浦地区で、継続的にお手伝いをしています。

都市計画だけでは、地元の人たちが思い描くようなまちづくりはなかなか進まないもの。

地域のビジョンを実現するために、具体的なマネジメントが必要になります。

海が目の前という環境に憧れる移住者や事業者はたくさんいます。

ただ、地域の「でごと」や行事は煩わしいと感じる人は少なくありません。

そうした人たちを無条件で受け入れてしまうと、 地域の担い手が不足し、環境の維持が難しくなってしまいます。

できるなら地域の考え方に寄り添い、協力してくれる人を受け入れたい。

そのために何ができるかを地元と一緒に考えてきました。

その中で、まず取り組んだのが「暮らしのガイドブック」。

これまで暗黙で守ってきた地域のルールやマナーを明文化したものです。

地域のよい面、煩わしい面も両方知ってもらった上で、付き合ってほしいという思いをまとめました。

ようやく公開できるカタチになったので、ご報告したいと思います。

野辺・福の浦地区の地域性

そもそもボクが野辺・福の浦地区に関わるきっかけについては、下記のブログに書いたので参照にしてください。

野辺・福の浦地区の地区計画と地域づくりvol.1

2019年4月6日

この地域の特徴を再度まとめると、農業と漁業の兼業が多いこと。

海を汚さないために合併浄化槽を早くから取り入れたり、自分たちが資金を出して道路整備に取り組んでいたりします。

孤立した集落で、行き止まりになった交通環境や水資源にも限りがあるため、住民同士の協力による自治活動がないと成り立たちません。

世帯数も54世帯(2019年時点)と少なく、高齢者が中心で小学生がいません。

今後、草刈りなどの人手が足りなくなることが容易に想像できます。

地域活動を維持するには、次世代の担い手が必要だというリアルな危機感があります。

野辺・福の浦地区(赤色部分)

地域の決まりごとのオープン化

「暮しのガイドブック」の目的は、地域に寄り添う移住者や事業者に来てほしいというもの。

とはいえ、田舎ゆえのつきあいや行事の多さは、都市部の人には煩わしいと感じてしまうのも事実です。

どうすれば、理想と現実のギャップを減らせるか?というのが悩みでした。

結論としてたどり着いたのが、「地域のありのまま」をオープンにすること。

田舎のよい面、煩わしい面も知ってもらった上で、付き合えるかどうかを自ら判断してもらうのがいいのではないかと考えました。

地区計画区域のほとんどが土砂災害計画区域なので、移住者や事業者には自主防災組織(自治会)への加入を促してほしいという 糸島市の意向も背景にありました。

野辺・福の浦地区の地区計画区域

とはいえ、暗黙知となっている地域の決まりごとを改めて整理するのは正直、骨が折れます。

解釈が人によって違ったり、うろ覚えのコト、なくなってしまった行事なども多々。

野辺と福の浦はもともと別の集落なので、自治組織も微妙に違えば、区費も違ったり……。

何も知らないまま移住すると、状況を把握するだけで大変なことがよく分かりました。

野辺・福の浦地区の年間行事
ガイドブックでは、自治組織の状況、区費なども費用もリアルに紹介しています。興味がある方は、このブログの最後をご覧ください。

「顔」の見える関係づくり

今回、地域の決まりごとのオープンと合わせて、盛り込んだのが顔を見える関係づくりです。

土地や建物を売買や貸借する前に、まちづくり協議会との事前協議をお願いすることをまちづくり協定に盛り込んでいます。

このまちづくり協定は任意の紳士協定なので、法的な強制力はありません。

地権者のほとんどが地元の人たちなので、資料配布や説明会を通じて地道に協力をお願いしてまわろうと考えています。

地域の人たちが気にするのは、建物意匠や景観などより、むしろゴミや騒音であったり、給排水のこと。

そうしたものは法律ではコントロールできません。

地域の人たちと事業者などがお互いに話し合い、歩み寄るしかありません。

地域に協力的な事業者でも、区長の存在自体を知らないということもありました。

お互いの顔を知り、実情を理解した上で、 連絡先や担当者の情報を交換するだけでも、関係づくりは前進すると思っています。

まちづくり協定の協議手順

地域に関わり続けるためのまちづくり事業組合の提案

今回ガイドブックには、事前協議以上に踏み込んだ提案を盛り込みました。

それは、地区に「まちづくり事業組合」を立ち上げること。

地域づくりのマネジメントを行うためには、継続的に関わり続けないといけません。

地域全体が自然公園法の区域でもあり土地利用のルールが複雑なので、住民有志によるまちづくり協議会だけでは、対応には限界もあります。

地域に事業を生み出すことで、地元の負担を増やさずに専門家として関与し続ける仕組みをつくりたいと前々から思っていました。

具体的には、地元の不動産の売買や賃借に関わることをベースに考えています。

できれば学生たちと取り組んでいる、甘夏かき氷やジュースなどの加工品開発も軌道にのせたい。

組織形態などの検討はこれからですが、具体的な相談もいくつか動き出したので、なんとか実現したいと思っています。

まちづくりの体制イメージ

地域に関わり続けるために

今回ガイドブックをつくるに当たり、いろいろと難しさも感じました。

地元でも、一人ひとりで考え方が違います。

役員さんたちとは別に、地元のお母さんには生活者目線の意見があります。

会議では事業者に対する意見はマイナスなものばっかりでしたが、息子さんや娘さんが働いていたり、「近所に若い人がいることは、何かあったときに助かりますよ」というおばあちゃんもいました。

学生たちとみかんジュースをつくったり、地祭りに参加したおかげでいろんな声に触れることができました。

小さな声は、地域に丁寧に通わないとなかなか見えてこないことを実感しました。

自治体も合併で広域化し、職員も限られる中、一つひとつの地域に丁寧にサポートすることが難しくなっています。

まちづくりの分野でも、住民だけでなく外部の人がもっと関わり続けられる仕組みが必要だと感じます。

これからそうしたモデルの一つをつくれればと思いながら、活動を続けていきたいと思います。

暮らしのガイドブックについて

実際の「野辺・福の浦地区暮らしのガイドブック」が必要な方は、Twitter@hmasa70、Facebook@hmasa70もしくはメール(masa.honda@gmail.com)にご連絡ください。

別途、ダウンロードページへのリンクを案内いたします。